いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

徒然なるままに読書の話を

たまには……徒然なるままに、読書について語りましょう。趣味はいくつかあるのですが、ひとつは読書です。特に理系っぽい新書が多いです。文庫も多く、東野圭吾氏のものは割とよく読みます。その他ミステリー、エッセイ、ジャンルはいろいろですが、読んでい…

『「世界征服」は可能か』紹介

『「世界征服」は可能か』(岡田斗司夫2007ちくまプリマ-新書)を読みました。著者の岡田氏はかつて「ガイナックス」というアニメ製作会社を立ち上げ、ヒット作も生み出した、その世界の一流のプロです。「レコーディングダイエット」の考案者でもあります…

FFT(高速フーリエ変換)の実験、パラメータなどの解釈(1)

少し前、このブログでフーリエ変換について書きました。 www.omoshiro-suugaku.com 量が多くなりますので何回かに分けますが、実際にFFTのコードを書くにはどうしたらいいのか、出てきた結果をどう解釈したらいいのか、など具体的に書いてみます。備忘録を兼…

いろいろな暦の閏年

1年は365日……ではありません。地球は太陽の周りを公転しています。だいたい365日で1周するんですが、より正確には365.2422日(近似値)なのです。これが1年、季節の1周です。実際、365日では足りないのでときどき閏年(366日の年)を入れていますよね。これ…

フーリエ変換で何ができるか

ぼくたちは音に囲まれています。この音は物理的には空気の振動が波として伝わる現象です。もう少し具体的に書きましょう。ギターを弾きます。弦は振動します。これは1秒間に何百回のスピードです。ぶるぶる震える弦の近くでは空気が瞬間的に圧縮されたり薄く…

面白かった本、3冊

ぼくが高校生のときに読み、大きな影響を受けた本を紹介します。 ●逆説論理学(野崎昭弘1980中公新書) 高校生の時読みました。パラドックスが満載です。パラドックスとは、正しそうな理屈で議論しているんだけれど出てきた結果がヘン、といった話です。「電…

バナッハ=タルスキのパラドックス

バナッハ=タルスキのパラドックスの話です。パラドックスというのは正しそうな議論をしているのに出てきた結果が何だかヘン、という話のこと。結果がヘンと言っても、今回のは証明されている事実であって、これは「バナッハ=タルスキの定理」なのです。し…

邪馬台国

邪馬台国について書きます。邪馬台国は3世紀頃日本にあり、卑弥呼(ひみこ)という女王が治めていたと言われています。中国の『三国志』という歴史書の中の『魏志倭人伝』(ぎしわじんでん)(正しくは『魏志』30巻のうちの『東夷伝』(とういでん)の中の…

『暗号の数理』紹介

『暗号の数理』(一松信2005講談社ブルーバックス)を紹介しましょう。高校生の時に古い版を読みましたが、最近新しい版も買いました。この本は、暗号の歴史、古い暗号から現代の暗号まで、そしてP問題、NP問題、P≠NP予想など、あまり数式は使わずに興味深い…

『天文の計算教室』紹介

今(現時刻)でも宇宙の構造は決まっていて、宇宙の果て(?)では何かが起こっていているはずです。しかしぼくたちはそういったことについて、よく理解しているとは到底言えません。宇宙で何が起こっているのか、宇宙はどういう構造なのか、宇宙はどういう…

『容疑者xの献身』、『四色問題』紹介

『容疑者Xの献身』(東野圭吾2008文春文庫)に天才的な数学の才能を持ちながら故あって高校教師をやっている石神という人物が出てきます。この石神がアパートの隣に住む片想いの相手、靖子とその娘が犯した殺人の隠蔽工作に手を貸します。やはり天才的な物理…

『フェルマーの最終定理』紹介

数学の中に350年間正しいかどうか不明だった予想があります。「n≧3のとき を満たす自然数の組x,y,zは存在しない」というものです。弁護士でアマチュア数学者だったフランスのフェルマーがディオファントスのテキスト『算術』の余白に「この定理に関し…

デジタル署名とは何か

デジタル署名について書きます。いぬおさんからメールが来ました。いぬおさんのアドレスだし、メールの最後には「いぬお」と書いてあります。これはもう間違いなく差出人はいぬおさんでしょう。……しかし、メールアドレスの詐称(発信者のアドレスを書き換え…

カイ2乗検定とは何か

大学生の時、文系の女の子に卒業論文の相談を受けました。「留学生にいろいろな質問をして、日本人学生と意見が違うということをハッキリさせたい」とのこと。ある質問に対して「はい」と答えるか、「いいえ」と答えるか、調査した結果が以下の表の通りだっ…

イコライザを作る

wav(ウェーブ)ファイルというのがあります。MediaPlayerなどを使ってパソコンで再生できますよね。wavファイルは構造が決まっていて、ファイルの先頭付近に音楽データの長さや、サンプリング周波数、ステレオかモノラルかの区別のための数値などが入ってい…

補間法で太陽までの距離を求める

今回、「ルート2」を「√2」と書いてしまうことにします。√2 ≒ 1.41421456(一夜一夜にひとみごろ)、√3 ≒ 1.7320508(人並みにおごれや)なのでした。では√2.5は? だいたいの値でいいです。今は100均でルートキー付きの電卓が買えるし、スマホならルートキ…

デフィーヘルマン鍵交換、『暗号技術入門 第3版』紹介

『暗号技術入門 第3版』(結城 浩2015ソフトバンククリエイティブ) を紹介します。これは面白い本でした!! 暗号技術全般について大変分かりやすく正確に解説しており、暗号に関する体系的な知識が得られます。ぼくとしては特に暗号技術における乱数の大切…

世界中の碁石が同色であることの証明!?

世界中に碁石がいくつあるかは分かりませんが、n個としておきましょう。実は、数学的帰納法を用いて「世の中の碁石n個は全て同色である」……①という事実を証明できるのです。「そんなバカな!?」と思うでしょうが、まあ見てください。数学的帰納法の証明は…

秘密を分散する

ある整数値が決められました。例えば金庫の解錠の番号だとしましょう。安全のため、長目に12桁です。この金庫はある人の所有物で、この人以外の4人にも解錠できるようにしたいと考えています。しかし4人全員が解錠の番号を知っていると、ある1人が悪い気を起…

『宇宙創成(上)』紹介、宇宙論雑感

『宇宙創成(上)』(サイモン・シン2009新潮文庫)を読みました。天文学がどう発展してきたのか、古代から現代まで、人間が宇宙をどうとらえていたのか書いてあります。科学史ですね。昔は観測技術もなく、宇宙の真の姿はもちろん、地球のことすら分かって…

『高校数学でわかる相対性理論』紹介

『高校数学でわかる相対性理論』 (竹内淳2013講談社ブルーバックス)を紹介しましょう。実際には「高校数学」だけで完全に理解、というのは難しい部分がある気はしますが、それでも素晴らしい本だと思いました。アインシュタインの特殊相対性理論から、速く走…

無理数の無理数乗が有理数になることはあるか

高校2年生の数Ⅱで(一応)実数の実数乗を定義します。それまで2の3乗など、自然数乗ばかりだったのが実数乗に拡張されます。なら、2を3個かけ合わせる。では2の乗なら? 「2を4/3回かけたもの」ではないのでした。「2を4乗した数の3乗根」が正解です。無理…

小説家、阿刀田高(あとうだたかし)紹介

わざわざエッセイを買って読む場合、同じテーマでも切り口が新しいとか、目からウロコの議論だとか、そんなのを求めてしまいます。阿刀田氏を勧めます。ショートショートの名手、ということになっています。実際そうなのですが、しかしぼくは彼のエッセイが…

ラグランジュの未定乗数法

高校生がこの問題を解くなら、たいてい以下のようにやるでしょう。 あとは平方完成でもすればいいですね。しかし、①から③を導きましたが、今回は①が簡単だったのでそれでよかったのです。①の代わりにとかだったらどうしますか? つまり、1変数について解き、…

数学者ポール・エルデシュ

エルデシュの話をしましょう。ポール・エルデシュ(1913~1996)、天才数学者です。彼は数学に最大限の時間を割けるよう、妻も子供も仕事も趣味も家も持ちませんでした。粗末なスーツケースとビニール袋ひとつで大学や研究所を飛び回る生活を続け、知り合い…

角の三等分問題

古代ギリシャの3大作図問題のうちの角の3等分問題について書きましょう。「任意に与えられた角を定規とコンパスを用いて3等分せよ」というもので、1837年、これが不可能であることをワンツェルが証明しました。例えば60°という角は3等分できない、つまり20°…

3彩色問題で本人の確認をする

太郎くんが目の前にいれば「あ、この人は太郎くんだ」とか分かります。しかし特にネット越しにメールかなんかのやりとりをしているだけでは「太郎くんだと思っていたら違うヤツだった!」なんてことが起こりかねません。「確かに太郎くんである」という保証…

EPRパラドックスとは何か

もう少し時間ができたら量子力学を勉強してみたいと思っています。量子力学というのは電子やもっと小さい素粒子などの振る舞いについて研究する物理学の一分野です。量子コンピュータが実用化されれば現代の暗号は無力になりますし(例えば「大きな整数の素…

書籍『幾何学』(清宮俊雄)を紹介します

『幾何学』(清宮俊雄1988科学振興社モノグラフ)を紹介しましょう。題材は初等幾何ですが、定理の特殊化、一般化など、新しい定理の発見法についてたくさん説明してあります。「清宮」は「せいみや」と読みます。 余談ですが、ぼくは初等幾何は好きなんです…

書籍『日の出・日の入りの計算-天体の出没時刻の求め方』の紹介

新聞には毎日、日の出・日の入りの時刻が載っています。これは誰かが計算しているのです。どうやって? 実は、出没方程式というのがあるのです。sin δ sinφ+cosδ cosφ cost= sin k δ、φ、t、kはもちろんそれぞれ意味がありますが、ここでは説明しません…