高校2年生の数Ⅱで(一応)実数の実数乗を定義します。それまで2の3乗など、自然数乗ばかりだったのが実数乗に拡張されます。なら、2を3個かけ合わせる。では2の乗なら? 「2を4/3回かけたもの」ではないのでした。「2を4乗した数の3乗根」が正解です。無理数乗も定義されます。例えば2の乗は何を意味するのか?
=1.41421356……なのでした。そこで
という数列を考え、この数列の極限値をもってと定義するのです。数列の各項は2の有理数乗ですから数列自体はきちんと定義されます。無理数乗を極限値で定義するなら数列が収束することの証明が必要ですが、高校ではそこまでやりません。
さて、今回は無理数乗が絡んだ問題です。無理数の無理数乗が有理数になることはあるでしょうか。5年以上前の『数学セミナー』に載っていました。今、とおきましょう。tは有理数かも知れないし、無理数かも知れません。もしtが有理数なら、まさにこれが要求された「無理数の無理数乗が有理数になる」例です。tが無理数だったら?
(指数法則を使った)
となりますから、これが「無理数の無理数乗が有理数になる」例です(無理数tの無理数乗が有理数2になる)。結局、tが有理数だとしても無理数だとしても無理数の無理数乗が有理数となる例が見つかりました。う~ん、正しい証明だけれど違和感はあります。tが有理数なのか無理数なのか分からないのに、有理数だったら……、無理数だったら……、とやっているのです。証明する本人には有理数なのか無理数なのか不明でも、証明としては成り立っているわけです。ちなみに、tは実際には無理数だそうです(しかも超越数です。超越数とは、係数が有理数である代数方程式の解にならない数のこと)。
違和感はあるけれど、そこがまた面白い気がします。
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