ぼくが高校生のときに読み、大きな影響を受けた本を紹介します。
●逆説論理学(野崎昭弘1980中公新書)
高校生の時読みました。パラドックスが満載です。パラドックスとは、正しそうな理屈で議論しているんだけれど出てきた結果がヘン、といった話です。「電子頭脳」を使った「必ず当たる」占い、世界中の碁石が同色であることの数学的帰納法を使った証明、時間Tの過去へ戻るために要するエネルギーなど、数学ではあるけれどちょっと変わった感じの話がたくさん書いてあります。
●マックスウェルの悪魔(都筑卓司2002講談社ブルーバックス)
物理学(の中の統計力学)の本です。物理学者マックスウェルが考えた悪魔が出てきます。いったん砂糖水と塩水を混ぜたら何か化学的な方法などを使わない限り分けることはできません(エネルギーも必要)。この悪魔は混ざった液体に仕切りの板を入れ、その板に小さな窓をたくさん作ります。そして砂糖の分子が右の部屋へ向かって飛んゆくとき、塩の分子(イオン)が左の部屋へ向かって飛んでゆくときだけ窓を開ける、という方法で2種類の液体を分離します。自由にこうしたことができるとどうなるか。できなくなると何が起こるか。そんな話が書いてあります。面白かった!
新装版 マックスウェルの悪魔―確率から物理学へ (ブルーバックス)
- 作者: 都筑卓司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/09/20
- メディア: 新書
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●パラドックスの世界(田村三郎1981講談社ブルーバックス)
婚約者を悲惨な事故で失った失意の技術者、三田さんが銀河系内の惑星、クイリグへ連れて行かれます。彼はクイリグの長官の子どもたちに数学を教えるのですが、その内容が書かれています。パラドックスが多く、大変興味深いです。第1章の最後では三田さんが地球に帰れるかどうかを賭けて長官と論理的なゲームをします。最も面白く、高校生だったぼくが衝撃を受けたのがこの場面でした。2つのドアのうち地球へ帰還できるドアはどちらなのか、三田さんは一種の「計算」で答えを出します。ぼくは「この世にこんな凄いことがあるのか……」と思いました。第2章、第3章も面白く、数学の基礎に疑いの目が向けられ、数学者たちがそれをどう解決したのか書いてあります。数学には他に基礎となる自然科学がありません。他の学問とは関係のない、絶対の正しさが要求されます。だからあれだけ厳密に証明もしますし、他の学問は数学を信頼できるのです。その基礎が揺らいだらそれは焦るでしょう……。そんな話が載っています。
パラドックスの世界―星間・逆説の旅 (ブルーバックス 467)
- 作者: 田村三郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1981/07
- メディア: 新書
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つくづく、本というのは凄いものだと思います。