いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

スペースマウンテンは何台走っているか(2)

以前、スペースマウンテンの台数について書きました。 www.omoshiro-suugaku.com 車両がスタートし、コースを回って止まり、またスタートするまでの時間をT(秒)とし、車両が出発する時間間隔を(平均的に)d秒としたとき、ドーム内に存在する(稼働してい…

「目に見える」無理数を作る

高校1年で、実数、無理数といった話が出てきます。無理数とは「整数/整数の形に書けない数」。それでもいいですが、あるいは「循環しない無限小数」と言ってもいい。循環する無限小数は有理数になってしまいます。教科書などの問題にもあるとおり、例えば x…

1次合同方程式を解く(バシェの定理からの続き)

前、バシェの定理を証明しました。 www.omoshiro-suugaku.com ax + by = 1が整数解を持つ ⇔ (a,b)=1 というものでした。 (a,m)=1であるとしましょう。バシェの定理によればこのとき aa’+my=1となるa’、yが存在します(文字は全て整数)。こ…

対数を使って2の1000乗の桁数を求められるか(2)

前、「対数を使って2の1000乗の桁数を求められるか」というタイトルで記事を書きました。 www.omoshiro-suugaku.com 例えばこんな問題を考えます。 常用対数をとると ゆえに よって16桁ということになります。上の記事で説明したように、対数の値を近似値で…

Bachet(バシェ)の定理

Bachet(バシェ)の定理について書きます。高校ではここまで扱うことは少ないでしょう。後でこれを使って合同式の簡約公式などを示します。なお (x, y) で x, y の最大公約数を表すことにします。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー Bachetの定理 文字を…

2元1次不定方程式の解き方、2通り

2x+3y=1(x、yは整数)……① を解きましょう。特に難しいというのでもなく、教科書にも載っている普通の問題です。 まず特殊解を見つけます。つまり①を満たすx、yの具体例を見つけます。カンで分かるでしょう。x=ー1、y=1でよいですね。する…

フェルマー素数についての定理をひとつ

nは自然数です。オイラーは上の形の数は必ず素数になると信じていたとか。しかし後に が示されてしまい、予想は成立しませんでした。これに関しては、次が成立します。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー の形の数(mは自然数)は、もしも素数であるとす…

合同式、7の倍数の判定法

今後のこともあるので、ここで合同式についてまとめておきましょう。あの三角形の「合同」ではありません。整数の話です。 ーーーーーーーーーーーーーー a≡b(mod m) ⇔a,bをmで割った余りが等しい ⇔a-bがmで割り切れる ーーーーーーーーーーーー…

ホームズの、暗号の出てくる短編『踊る人形』紹介

ホームズの「踊る人形(The Adventure of the Dancing Men)」という短編を紹介しましょう。ぼくは暗号がテーマになっている推理小説が好きなのですごく楽しめました。 ホームズのところへ、自分に届いたという謎の落書き?を持った男が訪れます。興味を持っ…

エラトステネスのふるいは正しいのか

nは自然数であるとします。このとき次が成立します。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 証明しましょう。 (1)n=ab(a,b≠1)とします。 (2)n≠1とし、n=abc……(3つ以上…

教育界が迷走している!

コロナ騒ぎで学校ではまともに授業が進んでいません。緊急事態宣言も解除され、ぼちぼち始まる感じです。ステイホームと言ってもやはりペストによる「創造的休暇」の最中に大きな仕事をしてしまったニュートンとは違います。ぼくは勉強はしたけれどファミレ…

オイラーの定数とは

オイラーの定数について書きます。 上の図で、x=1からx=nまでの、x軸とy=1/xのグラフで囲まれた部分の面積は で、黄色い部分の面積(短冊n-1本の面積)は です。短冊の和の方が面積は小さいので が成立します。 同様の比較で が言え、この2つの…

ニムというゲームの必勝法

ニムというゲームがあります。コインの山をいくつか用意します。山はいくつ作ってもよいですし、それぞれの山のコインは何枚でもOKです。山ごとに違う枚数にしても大丈夫。プレーヤーは交互に好きな山から好きな枚数だけコインを取ります(ひと山全部取って…

お話3つ。ゲーデル、角の3等分、だまだまマーク。

ゲーデルの話 故・竹内外史(がいし)先生(数学者。数学基礎論の専門家)が天才数学者ゲーデルについて「自分より100倍も200倍も賢いああいう人が自分より100倍も200倍も努力しているのを見ると自分も勉強しなければならないと思う」ということをおっしゃって…

πの値を三角関数の公式で求める

何年も前、何かの本で読みました。何の本かもう憶えておらず多分手元にありません。タイトルを思い出したら書きます。円周率を求める、ひとつの方法です。三角関数の公式をいくつか使うだけで、うまい方法だな、と思いました。 ………… こうして各コサインの値…

べき級数まとめ(2)テーラーの定理・マクローリンの定理

べき級数の第2回、テーラー展開、マクローリン展開の話です。 まずテーラーの定理(n=3の場合を書きます)。x,aを含む区間でf(x)が3回微分可能のとき、次の式を満たすcが存在します(一般にnで成立)。 ただしcは a と x の間の数です。最後の項に…

複素数の和の定義の前に和を考えてる……

近い話は前に書いたのですが、まあいいでしょう……。www.omoshiro-suugaku.com 教科書の複素数の導入はだいたい以下のような感じです。 を満たす特別の「数」i を考え、これを虚数単位と呼びます。この i を使った新しい「数」、a + bi を複素数と言うことに…

インタプリタを作る(4)字句解析とは何か

コロナ騒ぎもどうにか収まりつつあり、世の中が動き出しました。図書館も机は使えなくなっていて行っても勉強できず落ち着きませんが、本は借りられます。仕事も再開。この3ヶ月、それなりに勉強はしたけれど刺激がないのが辛かったです。学生はみんなかわい…

べき級数まとめ(1)収束半径

こんなのをべき級数というのでした。 これはeのx乗をマクローリン展開したものです。収束など細かなことを言わず形式的にこの式を導くだけなら高校3年の知識があれば十分です。元気な先生は「こんなのが成立する!」と教えているかも知れません。もちろん…

三角関数の極限値の求め方の中の循環論法について

三角関数の導関数の話をするとき、最初に出てくる極限値があります。次です。 x>0と考えれば十分です(x<0のときはx=ーtとおけばt>0となるので)。 図で、△OBD<扇形OBD<△OBA が成り立つので面積の公式から が成立です。ここでx→0とすればはさみ…

実数全体のうち、きちんと定義できる実数はどのくらいあるか

自然数全体の集合N、実数全体の集合Rはどちらも無限集合です。しかし同じ「無限」であっても程度があり、NよりもRの方が言わば「たくさんの無限」なのだ、という話を書きました。 数学の言葉では「Rの濃度はNの濃度より大きい」と表現します。 www.omoshiro-…

人間の体が細胞分裂できれいに作られるのはなぜ?

気になること2つ、書きます。どうなっているんだろう、みんな気にしていないのかな、とよく考えています。 ひとつ目。人間はうまくできていて、受精卵が細胞分裂して頭が作られ、胸が作られ、腕が作られ、手が作られ、指が作られ、……となります。指がちゃん…

恒等式の話で出てくる「数値代入法」について

数Ⅱの恒等式の問題です。どう解きますか? ----------------- がxの恒等式になるよう、a,b,cを定めなさい。 ----------------- 右辺を展開して係数を比較、とやってもいいですが、数値を代入する方法もあります。恒…

1歩で1段か2段のぼるとき10段の階段をのぼる方法は何通りあるか

1歩で1段か2段のぼることのできる人が10段の階段をのぼります。何通りののぼり方があるでしょうか。なお、例えば1,1,1,1,2,2,2(1段ずつ4歩、2段ずつ3歩の順にのぼる)と1,2,1,2,1,2,1(1段、2段、1段、2段、……)は区別します。 解き方はいくつ…

物理数学とのつきあい方

物理・工学でやる数学とのつきあい方についてひと言。普通の数学とは別に物理数学と言われる数学があります。ちゃんとした定義は知りませんが、(大学以降で)物理の勉強を進める上で必要な数学全般を指すようです。大学の授業の科目名になっていたり、本の…

電子回路の設計

すみません、回路の設計技術そのものの話ではありませんが……。高校の物理ではオームの法則、キルヒホッフの法則など、電子回路に関するテーマも扱います。でもこれをどんなに一生懸命勉強しても自分でラジオを作れるようにはなりません。設計でキルヒホッフ…

円周率を求めるためのマチンの公式、そして自分の公式を導く!

円周率の計算にはいくつも方法があります。前、ブログでライプニッツの公式を紹介しました。 www.omoshiro-suugaku.com きれいだし分かりやすくてよいのですが、実際に円周率の値を求めるのには向きません。上の記事で書きました。 このライプニッツの公式、…

ちょっとひと休み……。『ドイルとホームズを「探偵する」』紹介。

久しぶりに仕事で人と会いました。コロナ自粛でしばらくぶりです。人と話すといろいろ刺激も受けますし、緊張もします。これがいいんですね。しかし階段をのぼるときなんだかヨロヨロしていて、やはり歩かないとダメなのかな、と思いました。 通勤で本を読み…

インタプリタを作る(3)電卓は入力された「534」からどうやって534という数値を求めているのか

ぼくたちは「534」を見るとすぐ「五百三十四」のことだと理解できます。一瞬で「3桁だから先頭の5は100の位で……」と分かるわけです。しかしコンピュータには、先頭から順に読んで「5」「3」「4」と並んでいるようにしか見えません。534と思わせるには5を読む…

インタプリタを作る(2)

前、「インタプリタを作る」というタイトルで記事を1本書きました。続きです。「インタプリタで作る」ではありません。「インタプリタを作る」です。インタプリタというのは何なのかここでも簡単に説明しますが、前の記事もご覧ください。 www.omoshiro-suug…