いぬおさんのおもしろ数学実験室

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『容疑者xの献身』、『四色問題』紹介

 『容疑者Xの献身』(東野圭吾2008文春文庫)に天才的な数学の才能を持ちながら故あって高校教師をやっている石神という人物が出てきます。この石神がアパートの隣に住む片想いの相手、靖子とその娘が犯した殺人の隠蔽工作に手を貸します。やはり天才的な物理学者、湯川(東野圭吾ガリレオシリーズの湯川学)は刑事をやっている大学の同期の友人を助け、捜査に乗り出します。2人の頭脳戦です。DVDも持っています。とにかく面白いのですが、気の毒な話です……。

 湯川は学生時代、キャンパスのベンチで四色問題を証明しようとしていた石神に話しかけたことがあります。2人は同じ大学に在籍していたのです。石神は「あの証明は美しくない」と言いました。四色問題というのは「平面に描かれた地図は4色あれば塗り分けられるか?」というものです。なお「塗り分ける」とは「接している国には異なる色を塗る」の意味です。だいぶ前にアッペル、ハーケンの2人が「塗り分けられる」と証明しました。彼らの証明はコンピュータを用いたもので、石神は多分それが気に入らず、自分で証明し直そうとしていたのです。証明されたのだから「四色定理」とでも言われるべきなんだけれど、本屋さんで見かける本のタイトルは「四色問題」ばっかり。歴史的にそう呼ばれていた時間が長くてしっくりくるからでしょう。証明の概要は『四色問題』(一松 信2016講談社ブルーバックス)にあります。ぼくは古い版を読みました。面白かったのですが分からないところもたくさんありました。『四色問題』 (ロビン・ウィルソン2013新潮文庫)には「どんな地図にも、5個以下の隣国しか持たない国が少なくとも一つ含まれる」(「隣国は5つだけ定理」)という定理が「すべての四色問題の証明の基本」だと書いてあります。証明も載っており、この定理なら高校生くらいの学力があれば手が届きます。 

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

 
四色問題 どう解かれ何をもたらしたのか (ブルーバックス)
 
四色問題 (新潮文庫)

四色問題 (新潮文庫)