いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

書籍『日の出・日の入りの計算-天体の出没時刻の求め方』の紹介

 新聞には毎日、日の出・日の入りの時刻が載っています。これは誰かが計算しているのです。どうやって? 実は、出没方程式というのがあるのです。
sin δ sinφ+cosδ cosφ cost= sin k
δ、φ、t、kはもちろんそれぞれ意味がありますが、ここでは説明しません。とにかくこの方程式を解くと、任意の時刻、場所で、どの星(太陽も星です)がどこに見えるのかが分かります。真っ昼間でも、この方程式を解けば「蠍座のアンタレスはあっちにある」と指さすことができるのです。説明は『日の出・日の入りの計算ー天体の出没時刻の求め方』(長沢工1999地人書館)にあります。素晴らしい本です。高校生でもちゃんと数学を勉強しているなら2年生が終わる頃には読めるようになっているはずです。 

日の出・日の入りの計算―天体の出没時刻の求め方

日の出・日の入りの計算―天体の出没時刻の求め方

 

  方程式のsin、cosはあのサイン、コサインです。「なぜ日の出と三角関数に関係が?」と思う人がいるでしょう。地球は自転していて、それがそもそも太陽が動く原因です。三角関数では動径が回ります。だからものが回転している様子を表現するのに三角関数は都合がよいのですね。解説は大変丁寧で分かりやすく、しっかり読めば日の出、日の入りの時刻や方角を求める理屈を理解し、そして実際に自分の手で計算することができるようになります。大げさでなく、「自然界の仕組みの一端を明らかにできた」という感動を味わうことができます。数学や物理、そしてこれらを含む自然科学には絶対の強みがあります。それは実証です。どんなに立派で正しそうなことを言っても「じゃあ、やってみな」と言われたときに何もできないようでは信用などされません。理屈を理解するだけでなく、実際に出没方程式を解いて日の出の時刻を計算してみれば、自然科学の言う実証とはこれなのだ、と身にしみて理解できます。
 ぼくが最も影響を受けた本のうちの1冊です。