『幾何学』(清宮俊雄1988科学振興社モノグラフ)を紹介しましょう。題材は初等幾何ですが、定理の特殊化、一般化など、新しい定理の発見法についてたくさん説明してあります。「清宮」は「せいみや」と読みます。
余談ですが、ぼくは初等幾何は好きなんですが、初等幾何の問題を解くのは苦手です。初等幾何というのは直線、線分、円でできた図形を相手にして、相似だとか合同だとか三角形の辺が等しいとかの証明をしたりする、中学校以来やっているあれです。「初等」幾何だからといって、「易しい」と思ってはいけません。何日がんばっても解けないような問題が山ほどあるのです。有名なところではモーリーの定理「任意の三角形において、各内角の3等分線の隣同士の交点を結んで得られる三角形は正三角形である」があります。文章で読むと「??」ですが、図で見ると分かりやすいです。図の△PQRは正三角形だ、というのです。
なんとなく「そうなのかも」という気はしますが、証明は大変です。微積分などは、難しい証明でもその定理が後で役に立つことが分かっているので「さあ来い!」となるんですが、初等幾何の問題は……解けたらスッキリだけど、「それがどうした?」と言われそう……。
ぼくは清宮先生の『幾何学』を高校生の頃一生懸命読んでいました。この本には、最初に触れたように、新しい定理をどうやって発見するのか、その方法が詳しく書いてあります。決して空論ではなく、すぐにでも実行可能な方法です。実際、これに書いてある方法で清宮先生自身が「清宮の定理」というのを10代で発見・証明しています。そして、この定理の発見法は初等幾何にのみ有効というわけではなく、数学全般で共通です。数学が好きな人、初等幾何が好きな人にはお勧めです!