1年は365日……ではありません。地球は太陽の周りを公転しています。だいたい365日で1周するんですが、より正確には365.2422日(近似値)なのです。これが1年、季節の1周です。実際、365日では足りないのでときどき閏年(366日の年)を入れていますよね。これで、平均して1年が365.2422日になるように調整しているのです。毎年4月1日くらいに桜が咲くのは閏年のおかげです。毎年毎年365日だとしたらカレンダーの進みが季節より速いということになります。4年で1日程度ズレるので、120年後にはカレンダーが季節より30日ほど進み、5月の桜です。これはまずいでしょう……。
現行の暦、グレゴリオ暦では400年間に閏年が97回あるため、1年の平均日数
は次の通りです。
実際の1年の日数にかなり近いですね。なお、グレゴリオ暦の閏年に関しては過去の記事を。 www.omoshiro-suugaku.com
他の暦はどうでしょうか(過去、グレゴリオ暦でない暦もありました。今も)。365.2422を連分数で表してみます。使うのは次の事実のみです。
以下、電卓を用意して紙で一緒に計算してみてください。
この辺までにしておきましょう。①までで打ち切って0.2422≒0.25=1/4と考え、
と見れば、これは4年に1回閏年を入れる暦、ユリウス暦の1年間の平均日数です。2000年以上前にカエサルによって制定された暦です。②で打ち切って
とすれば、これは33年に8回ずつ
閏年を入れることを意味します。8/33=0.242424……なので、実際の1年の日数365.2422に現行のグレゴリオ暦よりも近いです。11世紀のペルシャで使われていた暦だそうです。同様に③で打ち切ると、計算は書きませんが(3.216385を3で置き換えて)
となり、これは128年に31回ずつ閏年を入れることを意味します。31/128=0.2421875なので、これも実際の1年の日数にかなり近いです。200年近く前に提案された閏年の入れ方です。現在、イラン暦で使われているそうです。閏年の入れ方を考えることは、365.2422を「365+整数/整数」の形に表すことなのです。
128年に31回ずつ閏年を入れると現行のグレゴリオ暦より実際の季節の運行に近い暦になるのでした。それなのになぜそういう暦を採用しないのか? 分かりませんが、歴史的な事情があるとか、あるいは閏年の入れ方(置閏法)がわかりにくくなるからかも知れません。実際、128年に31回と言われたって、どの年が閏年になるのか、憶えているのも大変でしょう……。
今回の記事は前にも紹介した『連分数の不思議』(木村俊一2012講談社ブルーバックス)によります。面白い本で、数学好きの高校生の皆さん、大学生の皆さんに勧めたいです。また『天文の計算教室』(斉田博1998地人書館)も暦について書いてあり、これも楽しい内容です。こちらも紹介済みです。