いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

フーリエ変換で何ができるか

ぼくたちは音に囲まれています。この音は物理的には空気の振動が波として伝わる現象です。もう少し具体的に書きましょう。ギターを弾きます。弦は振動します。これは1秒間に何百回のスピードです。ぶるぶる震える弦の近くでは空気が瞬間的に圧縮されたり薄く…

面白かった本、3冊

ぼくが高校生のときに読み、大きな影響を受けた本を紹介します。 ●逆説論理学(野崎昭弘1980中公新書) 高校生の時読みました。パラドックスが満載です。パラドックスとは、正しそうな理屈で議論しているんだけれど出てきた結果がヘン、といった話です。「電…

コオロギの鳴き声で気温が分かる

蝉(せみ)は気温が低くなるとゆっくり鳴くようになるそうです。確かに真夏、すごく暑いときにはすさまじい勢いで「ミンミンミン」と鳴いていますが、夏も終わりの涼しい日は「ミーンミーン…」と遅いですよね(やる気もなさそうな感じ)。そうしたら東京新聞…

2の常用対数の値を電卓で求める

2の常用対数の値を求めてみましょう。電卓を使います。logについては が成立することを注意しておきます。他、いくつか公式は使いますが高校の知識で大丈夫です。最初に示した式を、真数が10以上になるまで繰り返し使います。 ここから、 と続けます。これで…

最小2乗法で最も適切な直線を求める

何かの実験で、下の表が得られたとします。 どうやら何となく直線っぽいグラフが描けそうですが、どんな直線が一番いいと思いますか? よさそうなところに適当に描くわけにもいきません。 最適な直線を決めるためのいい方法があります。最小2乗法と言います…

バナッハ=タルスキのパラドックス

バナッハ=タルスキのパラドックスの話です。パラドックスというのは正しそうな議論をしているのに出てきた結果が何だかヘン、という話のこと。結果がヘンと言っても、今回のは証明されている事実であって、これは「バナッハ=タルスキの定理」なのです。し…

色つきカードをwebカメラで映してPCで色を判断する

PCで顔認識するのは大変です。しかし色の組み合わせなら? 例えば1000人に5cm×10cmくらいのカードを持たせます。カードは4区画に分かれており、各区画には7色から選んだ色が塗られます。つまり、カードの色がPCに見分けられれば7の4乗、2401人の見分けが…

邪馬台国

邪馬台国について書きます。邪馬台国は3世紀頃日本にあり、卑弥呼(ひみこ)という女王が治めていたと言われています。中国の『三国志』という歴史書の中の『魏志倭人伝』(ぎしわじんでん)(正しくは『魏志』30巻のうちの『東夷伝』(とういでん)の中の…

『暗号の数理』紹介

『暗号の数理』(一松信2005講談社ブルーバックス)を紹介しましょう。高校生の時に古い版を読みましたが、最近新しい版も買いました。この本は、暗号の歴史、古い暗号から現代の暗号まで、そしてP問題、NP問題、P≠NP予想など、あまり数式は使わずに興味深い…

画像処理(2)

画像処理(1)につづき、もう少し紹介しましょう。PCで写真(画像データ)を処理し、埋もれてしまっていた情報を見やすくするなどします。 ●コントラストを変える近い明るさのドットばかりが揃った画像は見づらくなります。コントラストが低い画像、と言いま…

『天文の計算教室』紹介

今(現時刻)でも宇宙の構造は決まっていて、宇宙の果て(?)では何かが起こっていているはずです。しかしぼくたちはそういったことについて、よく理解しているとは到底言えません。宇宙で何が起こっているのか、宇宙はどういう構造なのか、宇宙はどういう…

ディープラーニングで数字認識(2)

少し前、数字認識の実験をやっていました。数字認識を含む画像認識に興味があって勉強中です。画像認識とは………数字や文字をパソコンに見せて読ませたり、写真を見せて「写っているのは犬だ」などと判断させたりする技術です。画像認識はコンピュータには難し…

『容疑者xの献身』、『四色問題』紹介

『容疑者Xの献身』(東野圭吾2008文春文庫)に天才的な数学の才能を持ちながら故あって高校教師をやっている石神という人物が出てきます。この石神がアパートの隣に住む片想いの相手、靖子とその娘が犯した殺人の隠蔽工作に手を貸します。やはり天才的な物理…

2元1次不定方程式の特殊解を求める、分かりやすい方法

ユークリッドの互除法を用いて2元1次不定方程式の特殊解を求める方法、わかりにくい気がします。簡単な工夫で理解しやすくなるので、紹介しましょう。その前にまず互除法についてざっと復習しておきます。 互除法とは……例えば240と66の最大公約数(以下、最…

相関係数の意味

N人の生徒がいて、数学、国語の試験の得点が だとしましょう。このとき、数学と国語の相関係数rは次で計算されるのでした。 分母は数学の標準偏差と国語の標準偏差の積。分子は数学と国語の共分散です。このr、一体何を意味しているのでしょうか。一応、…

オリンピックにちなんだ問題

職場でオリンピックにちなんだ問題を出題されました。 考えやすいように各部分に変数を書いておきましょう。変数x1~x9は全て1から9までの自然数で、同じ数が2回以上使われることはありません。図には円が5個描かれていますが、これらに入っている自然数の和…

『フェルマーの最終定理』紹介

数学の中に350年間正しいかどうか不明だった予想があります。「n≧3のとき を満たす自然数の組x,y,zは存在しない」というものです。弁護士でアマチュア数学者だったフランスのフェルマーがディオファントスのテキスト『算術』の余白に「この定理に関し…

水素原子から出てくる光の波長、バルマー系列

1884年、スイスの物理学者、バルマーは水素ガスを温めたときに出てくる光の波長を測定して、不思議なことに気づきました。それこそ様々な波長の光が混ざっていそうなもんですが、656.3nm, 486.1nm, 434.1nm,410.2nm, 397.0nm, ………に限られていたのです。「…

教員のウソ

ぼくも高校で数学を教わったわけですが、先生の話で印象に残っているのがあります。虚数単位iについての話です。iは を満たす特別の「数」なのでした。先生は「iは実際にはない数です。だから目に見えない電気を表すのに都合がいいんです」と。生徒は一同…

昔のPC環境

大学に入ってずいぶん経って先輩から使い古しのパソコンを買いました。PC-8001というやつです。もちろん当時のパソコンは今に比べればまるっきり非力で、たいしたことはあまりできませんでした。ソフトもほとんどなし。そもそも売られていないのです。いや、…

デジタル署名とは何か

デジタル署名について書きます。いぬおさんからメールが来ました。いぬおさんのアドレスだし、メールの最後には「いぬお」と書いてあります。これはもう間違いなく差出人はいぬおさんでしょう。……しかし、メールアドレスの詐称(発信者のアドレスを書き換え…

カイ2乗検定とは何か

大学生の時、文系の女の子に卒業論文の相談を受けました。「留学生にいろいろな質問をして、日本人学生と意見が違うということをハッキリさせたい」とのこと。ある質問に対して「はい」と答えるか、「いいえ」と答えるか、調査した結果が以下の表の通りだっ…

ステガノグラフィーとは何か

ステガノグラフィー(steganography)の話をしましょう。ステガノグラフィーとは、データを画像など、他のデータの中に隠す技術です。近い(?)ものに暗号というのがあります。暗号は文章を読めなくする技術、ステガノグラフィーは文章の存在自体を隠す技術…

イコライザを作る

wav(ウェーブ)ファイルというのがあります。MediaPlayerなどを使ってパソコンで再生できますよね。wavファイルは構造が決まっていて、ファイルの先頭付近に音楽データの長さや、サンプリング周波数、ステレオかモノラルかの区別のための数値などが入ってい…

画像処理の話(1)

昔のTVの画像はアナログ信号で送信されていました。そのため送信途中で何かエラーが起こっても(ノイズが入るとか)直す方法はありませんでした。今(地デジ)はデジタル信号で、ノイズが入っても、入っていない信号を再送させたりして訂正できます(コンピ…

補間法で太陽までの距離を求める

今回、「ルート2」を「√2」と書いてしまうことにします。√2 ≒ 1.41421456(一夜一夜にひとみごろ)、√3 ≒ 1.7320508(人並みにおごれや)なのでした。では√2.5は? だいたいの値でいいです。今は100均でルートキー付きの電卓が買えるし、スマホならルートキ…

確率のパラドックスをひとつ……

割合(ここでは確率)のちょっと不思議な話を書きましょう。 袋A、A’、B、B’にくじが入っています。内訳は次の通りです。袋A くじは10本。そのうち当たりは3本。当たる確率は3/10。袋B くじは60本。そのうち当たりは17本。当たる確率は17/60。袋A’ …

『図の斜線部』は必要か?

高校の数学Ⅱの領域の問題では、領域は斜線を引いて表すことになっています。そうしないと先生が「斜線を引いて『図の斜線部』と書かないとダメ」とか注意します。しかしですね……。 領域に斜線を引いたら、そこが答えに決まっていると思うんですが……。それで…

録音した「グロブなては」を逆に再生しても「はてなブログ」には聞こえない

昔、カセットテープというのがありました。古い「ウォークマン」、ご存じでしょうか。音楽をカセットテープに録音し、それをみんな聴いていたのです。写真がカセットテープです。エヴァンゲリオンで、碇(いかり)シンジ君がよく聴いていたのがこれ。 さて、何…

デフィーヘルマン鍵交換、『暗号技術入門 第3版』紹介

『暗号技術入門 第3版』(結城 浩2015ソフトバンククリエイティブ) を紹介します。これは面白い本でした!! 暗号技術全般について大変分かりやすく正確に解説しており、暗号に関する体系的な知識が得られます。ぼくとしては特に暗号技術における乱数の大切…