『宇宙創成(上)』(サイモン・シン2009新潮文庫)を読みました。天文学がどう発展してきたのか、古代から現代まで、人間が宇宙をどうとらえていたのか書いてあります。科学史ですね。昔は観測技術もなく、宇宙の真の姿はもちろん、地球のことすら分かっていませんでした。観測技術どころか、「観測が必要」という発想すらなかった時代もありました。この本では優秀な学者が次々に登場し、地球の大きさ、太陽との距離、地球が太陽の周りを回っていること、太陽系は銀河系のメンバーに過ぎないことなど、だんだん分かってくる様子が楽しく詳しく書かれています。

- 作者: サイモンシン,Simon Singh,青木薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: 文庫
- 購入: 12人 クリック: 394回
- この商品を含むブログ (129件) を見る
1900年代初頭、アインシュタインが一般相対性理論の中で次のような方程式を導いています。
小さな文字(添え字と言う)がついているのはテンソルと呼ばれるもの。Gは万有引力定数(高校の物理に出てくるやつ)、cは光速度です。宇宙論(宇宙の始まりは? 宇宙はどう進化してきた? これからどうなる?)はこれを基礎としています。フリードマンという数学者は、この方程式をある仮定の下で解き、「永遠に不変」ではない宇宙もあり得る、ということを示しました。……そう説明されるとなんとなく「ああ、そういうものか」ということになりますし、TVなんかでは見やすく分かりやすく番組を作っていて、分かったつもりにさせてくれます。しかしですね……。
ブラックホールひとつとっても、宇宙が舞台のSFアニメなんかではさんざん出てきて珍しくも何ともないけれど、身近にブラックホールを理論的に説明できる人が何人いるでしょうか。恒星(太陽みたいな星)が自分の重力でつぶれ、光すら出てこられなくなった天体。大抵はそのくらいの知識があるだけですよね。ぼくたちはろくに意味も分からずに平気でブラックホールの話をしているということです。
少し前、急にこれが気持ち悪くなって「勉強するぞ!!」と相対性理論とテンソル解析の本を何冊か買い込んできました。相対性理論は特殊相対性理論と一般相対性理論に分かれ、宇宙論、ブラックホールなどを扱うのは一般相対性理論です。「テンソル地獄」と呼ばれたりするそうです。さっきの、記号に添え字が何個もくっついたあれです。大学では(専門は数学でしたし)ほとんど出てきた記憶はありません。そういうわけで一時期、テンソルの本を問題を解きながら勉強していたのですが、つくづく不思議でした。内容のことではありません。何でこんなものを使って宇宙の姿が分かるのか、ということです。ブラックホールよりこちらの方が不思議かも……。ふた言目には「数学なんか役に立たない」と主張する人たちがいるけれど、そういう気楽なレベルで言っていいなら「数学は何の役にも立つ」だよなあ、と思います……。