いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

数学者ポール・エルデシュ

 エルデシュの話をしましょう。ポール・エルデシュ(1913~1996)、天才数学者です。彼は数学に最大限の時間を割けるよう、妻も子供も仕事も趣味も家も持ちませんでした。粗末なスーツケースとビニール袋ひとつで大学や研究所を飛び回る生活を続け、知り合いの数学者の家に忽然と現れ、1日か2日、彼が退屈するか相手の数学者が疲れ切るまで一緒に問題を解き、それから次の数学者の家へ移ったのだそうです。発表した論文は共著を含め1475本、どれもが重要な、質の高いものであったと言います。彼は高校生のときに当時高度な証明しかなかった「自然数 n ≧ 2 に対して、n < p < 2n を満たす素数 p が存在する」という定理の初等的な証明を与えました。定理の主張は、例えば5と10の間には素数(7)があり、48と96の間にもあり(53など)、100と200の間にもあり(101とか)、……ということです。
 そんな彼の名前を冠したエルデシュ・ナンバーというのがあります。エルデシュと一緒に論文を書いた数学者にはエルデシュ・ナンバー1を与えます。エルデシュ・ナンバーが1である数学者と共著の論文がある数学者にはエルデシュ・ナンバー2を与えます。……一般に、エルデシュ・ナンバーがnである数学者と共著の論文がある数学者のエルデシュ・ナンバーはn+1です。エルデシュは亡くなっていますから、今後新たにエルデシュ・ナンバーが1の数学者が現れることはありません。まあおふざけみたいなものかも知れませんが、数学者にとってはちょっとした自慢のタネなのだそうです。スモール・ワールド現象というのを知っていますか? 知り合いの知り合いの知り合い、……とたどると6、7人で誰とでもつながる、という説です。実際、現役数学者はその大半がエルデシュ・ナンバーが7以下なのだそうです。
 『これも数学だった!? カーナビ・路線図・SNS』 (河原林 健一 、 田井中 麻都佳2013丸善ライブラリー) にはエルデシュ・ナンバーを始め、タイトル通り「こんな所にも数学が!?」という例がいくつも書いてあります。 

これも数学だった!?: カーナビ、路線図、SNS (丸善ライブラリー)

これも数学だった!?: カーナビ、路線図、SNS (丸善ライブラリー)