いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

小説家、阿刀田高(あとうだたかし)紹介

 わざわざエッセイを買って読む場合、同じテーマでも切り口が新しいとか、目からウロコの議論だとか、そんなのを求めてしまいます。阿刀田氏を勧めます。ショートショートの名手、ということになっています。実際そうなのですが、しかしぼくは彼のエッセイがいいと思います。とにかく分かりやすい文章を書く人です(何を考えているのか、読みづらい、分かりづらいのを書く人もいますよね)。しかしそれよりも何よりも「そういう発想はなかったよな」、「こんなことは知らなかった!」というエッセイが多いです。本って、こうでなくっちゃあ……。歴史物も多く書いていますが、個人的には『恐怖コレクション』、『アラビアンナイトを楽しむために』など、古いエッセイが好きです。『恐怖コレクション』はヒタヒタと静かに迫ってくる真実の恐怖を教えてくれます。『アラビアンナイトを楽しむために』は、読めば『アラビアンナイト』という物語の作りも分かるし、面白い部分をサッと味わうこともできるように書かれています。彼は文系の人ですが、巡り合わせであって、理系に進んでも不思議ではない人だと感じました。ここでは挙げませんが科学的なことを扱ったエッセイも多く、唸らされることもあります。

恐怖コレクション (新潮文庫)

恐怖コレクション (新潮文庫)

 
アラビアンナイトを楽しむために (新潮文庫)

アラビアンナイトを楽しむために (新潮文庫)

 

  彼のショートショートは、多分ぼくは全部読んでいると思います。切れのよいものがたくさんありますが、グーッと盛り上がって頂点でふっと力が抜けるような印象の話も多くて個人的にはそれが心地よいです。音楽に例えるとフォーレみたいな。……って伝わりにくいですよね、すみません。