いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

EPRパラドックスとは何か

 もう少し時間ができたら量子力学を勉強してみたいと思っています。量子力学というのは電子やもっと小さい素粒子などの振る舞いについて研究する物理学の一分野です。量子コンピュータが実用化されれば現代の暗号は無力になりますし(例えば「大きな整数の素因数分解は困難である」という数学的な経験則に基づいたRSA暗号などは第三者に解読されてしまう)、先に量子暗号が開発されれば(第三者には解読が原理的に不可能なので)量子コンピュータを使っても解読はできません。その辺の事情もきちんと勉強してみたいと思っています。そして、もっとやってみたいことが。ぼくは大学の物理教育は1年間受けただけです。専門ではないので、ヘンなことを書くかも知れませんが勘弁してください。おかしいところに気づいたら教えていただけるとありがたいです。
 量子力学の教えるところによると「1個の電子の位置は、観測前には場所AとBに50%ずつ存在する」などとなります。これは「どちらか一方に存在していることは確かである。しかし観測前だからどちらかわからない。だからAにいる確率は50%」ということではなく、本当に「同時に確率50%ずつで存在している」と考えられています。そう解釈するしかないという事情があります。そして、位置の観測をして初めて「Bに存在する確率が100%」などとなるのです。納得できないでしょうが、小さな粒子はそうなのだ、と思いましょう。ここまでは『鏡の中の物理学』(朝永振一郎1976講談社学術文庫)を読むと「そういうものか」となるはずです。名著です。面白かった!! 

鏡の中の物理学 (講談社学術文庫)

鏡の中の物理学 (講談社学術文庫)

 

さて、今1個の素粒子が分裂して電子2個になったとします。素粒子は「スピン」という量をもちます。古典物理学ではこれは右回り、左回りの回転の勢い(角運動量)にあたります。角運動量については角運動量保存則というのがあります。それによると、最初の素粒子が回転していなかった場合、分裂した一方の電子が右回りなら残りの電子は左回りでなければなりません。十分時間が経って2個の電子は100光年(光の速さで100年の距離)くらい離れたとしましょう。スピンもさっきの位置の話と同じで、観測するまでは左回りか右回りかは言わば混ざった状態、50%ずつです。ここで一方の電子のスピンを測定します。例えば右回りに決まるわけですが、この瞬間、100光年離れた電子もどっち回りか確定するのです。左回り、右回りが混ざった状態だったのが、いきなり「バシッ!」と左回りに決まるということです。100光年離れたところで電子の角運動量の観測を行ったことにより、もう一方の電子の状態がいきなり変化するわけです。アインシュタイン量子力学の考え方に納得していませんでした。「こういう話、どう考えればいいのか説明せよ」と迫ったのです。確かにおかしい気はします。一緒に生まれた電子はどんなに離れても深ーいつながりがあるのです。距離を超えて2つの電子をつなぐ情報の伝達ルートがある、宇宙はそういうつくりなのである、とでも考えないと理解できません。EPR効果(EPRパラドックス。E、P、Rはアインシュタインポドルスキー、ローゼンの頭文字)と呼ばれ、今では事実であると分かっているそうです。何をどうしたらこれが事実だと分かるのか、理屈を勉強してみたいです。