いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

『真理とは何か』にある、整数の面白い問題

 1より大きい2つの正の整数が選ばれました。あるルートから、数学者S氏はその2数の和を聞き、数学者P氏はそれらの積を知りました。2人がほかの用事で電話している間に、たまたま話題がその2つの数のこととなりました。S氏は言いました。

「僕はその2数の和を聞いただけだから、積を知ったという君のことを、ちょっと羨ましいと思ったけれど、考えてみれば君だって、その積からだけじゃ、もとの2数が何だったのか分からないわけだね」

この電話が終わってから1時間ほどして、P氏からS氏に電話がありました。

「君があんなこと言ったんで、僕には例の2数が何だかわかってしまったよ」

それから1時間ほどして今度はS氏がP氏に電話しました。

「僕も例の2数がわかった。君の電話のおかげだ」

 S氏の聞いた2数の和が50より小さかったものとして(そのことを、最初はP氏は知りません)、もとの2数は何だったのか、今度は皆さんが当ててください。

 

 『真理とは何か』(大熊 正1981講談社現代新書 )の最初にこの問題が書いてあります。オランダのH.フロイデンタルという人の創案によるもので、マーチン・ガードナー氏がサイエンティフィック・アメリカン誌で紹介したのだそうです。面白いので少し長いですがそのまま引用しました。少しでも間違えると解答にたどり着けなくなることもあるので、一応丁寧に点検しました。amazonで古本なら安く手に入ります。ぼくは高校時代に読み、面白い本だったので憶えています。問題の答えも載っていますから興味のある方は見ていただきたいと思います。すぐに分かるのは「P氏が聞いたのは素数ではない」ということでしょう。さらに「素数×素数ではない」ということです。実際、例えば積が21だったら「3と7だ!」とすぐに分かってしまうからです。しかし、その後が難しい……。それでも問題としてこれは面白いでしょう。3ページ程度の解答です。

 面白い問題というのは多いですが、その面白さはいろいろでしょう。自分にとって新しい考え方が含まれている解法。見方を変えるとゴールまで一本道のような問題。「分からない問題にはこうして対応するのだ」と、言わば「どのように考えてゆけばよいのか」を教えてくれるような解答。今回の問題は、ぼくの感じでは「到底、解答を導くのに必要な情報など足りていなさそうなのに実はそうではなかった、と後で分かる問題」といったところでしょうか。

 数学好きの高校生には是非読んで欲しい本の1冊です。