自然数(1,2,3,…)のうち、1は素数ではありません。これは約束です。そう約束したい理由はありますが、ここでは略。残る2,3,4,…で、1と自分自身以外の数では割りきれない数を素数というのでした。例えば7は素数ですが、6は素数ではありません。6は2や3で割り切れるからです。さて、隣り合う自然数(5と6、など)はどちらか一方は偶数です。つまり2で割り切れます。そうすると隣り合う自然数がともに素数となることはありません(2,3の組を除いて)。しかし、ひとつおきならありえます。例えば3,5は差が2の素数の組です。5,7も。でも9,11は違います。9は素数ではありません。5,7のように差が2の素数の組を双子素数と言います。この双子素数ですが、先まで探すとたくさん見つかります。857,859とか。しかしこれが無数にあるのかどうか、分かっていません。大変な難問なのです。平成25年5月21日の東京新聞に「差が7千万以下の素数の組なら無数にあるということが証明された」とあります。「それがどうした」と思うかも知れません。しかし、分かりませんが特に今回みたいに素数周辺のいろんな事実が明らかになったりすると、場合によっては何かが大きく変わるかも知れません。
現代の暗号は、暗号文「こたんにたちは」の近くにタヌキの絵が描いてあって「こんにちは」と解読する(「た」を抜く!)、なんて幼稚なものとは全く異なります。数学の整数論などを使った、事実上解読不能な暗号です。有名なのはRSA暗号などで(ネットでも使われています)、これは大きな数の素因数分解は大変困難であるという数学的な経験則を利用しています。素因数分解は、例えば238とか、小さな数ならすぐできるのです。しかしこれが数百桁にもなるともう何をどうしてもできません。「スーパーコンピュータを何千万台つないでも何千万年あっても」といった表現、どこかで見たことがあると思います。しかし、「素因数分解を高速に実行する方法は存在しない」と証明されているわけでもありません。ことによると、今回の記事にある事実から何かの拍子にうまい素因数分解の方法が見つからないとも限らないのです。それにこうした整数論(整数が持っている色々な性質を研究する数学の一分野)自体、ずっと「日常生活に全く役に立たない」と言われていたのに、暗号に使われるようになっていきなり「重要な理論」に格上げされてしまった、という歴史があります。記事の話はまさに素数に関する定理。これがどこでいきなり大事な役割を持つようになるか、誰にも予想はできません。簡単に「こんなものには意味がない」と言って切り捨てることはできないはずです。
理系の人が「こんなもの……」と言っているのを聞くと悲しいです。そう言えば大学の1コ上の先輩で「何の役に立つんだよ」とよくぼくにケンカを売っていた化学の人がいたなあ……。