いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

書籍『物理のための数学 』紹介

 今読んでいる『キーポイント力学 (物理のキーポイント (1))』(吉田春夫1996岩波書店)の巻末に力学の本が紹介されています。参考文献というのではなく、著者が「この分野を勉強するならこの本を勧める」みたいな感じに書いています。そのうちの1冊です。

 ぼくはマジックも趣味で、松田道弘氏(マジック研究家)の著書を何冊も持っています。そのうちの1冊にマジックの本について「昔は今のように情報もなかった。英語の本の巻末に載っている参考文献のリストを1冊ずつ集めて印をつけてゆくのが楽しかった。優れた参考文献リストは未知の海原を航海するときの海図である」といったことを書いています。なるほど、と思います。その分野をきちんと勉強しようとするとき、よい本というものがあるのです。きちんと勉強した人が紹介してくれているのですね。本屋さんで自分で中身をちょっと見たくらいではいいのか悪いのか分からないことも多いでしょう。参考文献リストでは本の特徴も載っていることも多く、「これはいいかも」と思ったら本屋さんで実物を見て「おお、これなら間違いない」と判断してから買う、というのがよろしい。

 今回紹介するのはそういう買い方をした本です。 

物理のための数学 (物理入門コース 新装版)

物理のための数学 (物理入門コース 新装版)

  • 作者:和達 三樹
  • 発売日: 2017/12/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

物理で使いそうな数学が取り上げられています。目次は以下の通り。

1 基本的な知識
 1-1 三角関数
 1-2 指数関数と対数関数
 1-3 複素数
 1-4 偏微分
2 ベクトルと行列
 2-1 ベクトル
 2-2 スカラー積とベクトル積
 2-3 行列
 2-4 行列式
 2-5 連立1次方程式を行列式でとく
 2-6 行列の固有値と行列の対角化
 2-7 座標変換とベクトル
 2-8 テンソル
 2-9 テンソルの物理例
3 常微分方程式
 3-1 常微分方程式
 3-2 1階微分方程式
 3-3 完全形
 3-4 2階微分方程式
 3-5 2階線形微分方程式
 3-6 定数係数の2階線形微分方程式
 3-7 振動
 3-8 連成振動
4 ベクトルの微分とベクトル微分演算子
 4-1 ベクトルの微分
 4-2 2次元(平面)極座標
 4-3 運動座標系
 4-4 ベクトル場とベクトル演算子
 4-5 公式とその応用
5 多重積分,線積分,面積分積分定理
 5-1 多重積分
 5-2 線積分と面積分
 5-3 平面におけるグリーンの定理
 5-4 ガウスの定理
 5-5 ストークスの定理
6 フーリエ級数フーリエ積分
 6-1 フーリエ級数
 6-2 フーリエ正弦級数フーリエ余弦級数
 6-3 フーリエ積分
 6-4 強制振動
 6-5 ディラックデルタ関数
7 偏微分方程式
 7-1 偏微分方程式
 7-2 1次元波動方程式
 7-3 1次元熱伝導方程式
 7-4 無限区間での波動
 7-5 無限に長い棒での熱伝導
 7-6 2次元波動方程式
 7-7 ラプラス方程式ポアソン方程式
複素関数など、物理で必要だけれどこの本では扱っていない分野もありますが、別途、手当てすればよいと思います。買ったばかりでこれから勉強するのですから迂闊なことは言えませんが、よさそうです。2時間くらいあちこち眺めて、分かりやすいかな、と思いました。公式もまとめてありますし、証明も載っています(3つ、4つ読んでみたところ分かりやすかった)。面白いと思ったのはやはり「物理数学」なんですね、あっちにもこっちにも「物理例」として公式、定義などが物理の中でどういう形で生かされているのか、たくさん載っていて、具体的な現象をイメージしやすくなっています。例えばガウスの発散定理を直観的に導いた後、数学的に証明する、など。巻末には「数学公式」として結果のみが数ページにまとめられていて重宝しそうです。情報はあちこち、ばらばらになっているとなかなか活かせません。公式集や、この本のようなものはやはり必要です。演習書も別にあります。

 『宇宙戦艦ヤマト』の真田さんや『ガリレオ』の湯川先生もこういうことを勉強していたんでしょう。ぼくもがんばります!!