大学の理系の学部に入るとすぐに微積分の授業が始まります。大学、学部によると思いますが、微積分の中で割と早い時期に「ε-δ論法」(イプシロン-デルタ論法)というのが出てきます。高校では
(xを3に限りなく近づけると2x-1は5に限りなく近づく)は当たり前の事実として扱います。しかし、考えてみれば「どうして?」と聞かれたら答えようがないことに気づきます。元気な先生は「これは高校では証明抜きで認めるが、大学では証明します」と説明したりします。高校の数学にはこれを証明するための数学的な道具がないのです。それがε-δ論法です。一応、分かりづらいという感じに言われていて、「悪名高い(あくみょうだかい)」と表現されることも。でもぼくは「ああ、こういう方法で証明するんだ……」と面白く思いました。
今回紹介する『数学での証明法』はこのε-δ論法を丁寧に、分かりやすく解説しています。例えば……証明では、任意に与えられたεに対してδを決めなければならいのですが、よくあるテキストではいきなり「δをこう選べば」となっています。それがこの本ではδをなぜそう決めるのか明らかにしています。根拠が説明してあるのです。薄い本ですし、これだけ勉強すればO.K.とかいうことでもないでしょうが、読めばε-δ論法に自信が持てると思います。 ε-δ論法を使いこなせるようになれば、その先には広大な微積分、複素解析の世界が待っています。
同じ数学ワンポイント双書の『イプシロン-デルタ』 (田島一郎1978共立出版)も素晴らしい本だと思います。こちらもお勧めです。