いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

読書のすすめ

 あまり本を読まない若い人たちが少なくなさそうです。一番まずいと思うのは、本を読まない結果、世の中にどんな面白いことがあるのか気づくことができないことです。知らないことに気づきませんから、本人の気持ちはいたって平和です。しかし高校生なら、今やっている勉強が先でどんなことにつながっているのか分かりません。そうなると勉強にも意味を見い出せません。

 受験のために、などと言うつもりは全くありませんが、例えば小論文などを書くことを考えてみましょう。教員の中にも強者がいて、「小論文は知識ではない。テクニックだ」とか言い切ったりします。そういう部分はあるにせよ、全面的に肯定する、というわけにはいきません。本を読んでおらず、書くための材料が頭に入っていないとロクなものが書けません。具体的な知識がないので、無理に書こうとすると抽象的な議論に終始するかあやふやな想像に頼るしかないのです。例えば公害について書こうとしても「公害は体に悪いから環境を改善しなければならない」とか……。読み手も「こんなの、読んでも何にもならないよな……」と思うことでしょう。いくら表現のための作文の練習をしても、そんなことで知識のなさは補えません「小論文の書き方」みたいな本を読んで練習したところで、関係する分野の知識がなければ、見たところは何となく小論文っぽいけれど貧弱な薄っぺらい内容のものができあがるだけなのです。あとひとつ例を挙げておきましょう。今、コロナ騒ぎで大変な時期です。例えば看護学科などでこうした感染症についてのテーマで何か書かされることがあるかも知れません。このとき、感染症そのものでなくても関係するテーマの新書を何冊か読んでいれば(例えば抗生物質に関する本とか)書ける文章の質は比較にならないほど上がるでしょう。
 いや、小論文の問題など実はどうでもよろしい。「受験科目じゃないから」などと言って、数学でも何でも簡単に切り捨ててしまう生徒をたくさん見受けます。とにかくとりあえず必要と考えるギリギリの勉強しかしない。ぼくはそういう生徒には「どうしてこういう現象が起こるんだろう」とか「あれも、これも知りたい」とかいう若者らしい切迫感のようなものをまったく感じないのです。本を読んで欲しいと思います。小説もいいですが、特に新書を薦めます。新書判(173×105mm程度)の本です。およそ人間が興味を持ちそうなことはすべて、新書になっているはずです。