中心力とは、空間内の点Pに働く力で常に定点Oを向いているものを言います。物体に中心力しか働いていないとき、その物体の面積速度は一定です。面積速度とは単位時間に線分OPが掃く面積です。中心力が動径OPの長さの2乗に反比例しようが、OPに比例しようが、面積速度は変化しないのです。これは相当不思議な事実と言わなければなりません。これを示しましょう。以下は何回か紹介しているテキストによる証明です。
さて、実は中心力しか働いていないときには物体は平面上を運動します。当たり前……な気もしますが、テキストにはこれの説明もあります。一応、ここではこの事実は認めておきましょう。OP=rとおき、Oを通る基準の直線からOPまでの角をφとします。このとき次が成立します。もちろんr、φは時間で変化します。
時間で微分して
再び時間で微分して
Oに向かう力はf(r)であるとすると
③×cosφ + ④×sin φ、③×sinφ - ④×cos φ より
これに①、②を代入して整理すると
⑦は動径方向の運動方程式、⑧はφ方向の運動方程式です。⑧から次の式が分かります。
これは次を意味します。
は、近似的に時間Δt(Δt≒0、つまりΔφ≒0と考えた)で線分OPが掃く面積ですから、
つまり、⑨は面積速度が一定であることを示しています。
これは凄い……って、何が凄いのかというと……特別なことはしていないのです。単に導関数を求めて代入などして式変形するだけ。それだけでこんなことが示せるのです。数学、物理の力には恐れ入るばかりです。ケプラーは師、ティコ・ブラーエの残した膨大な観測結果の山からこれを導きました。もちろん現代とは表現の仕方は違うのでしょうが、こちらもまた凄い。計算機もない時代(17世紀)です。気の遠くなるような作業をして、気の遠くなるような考察をしたのではないでしょうか。こういうことを考えると自分など本当に甘っちょろいなあ、と思います……。