前回、条件文について書きました。続けて背理法について見てみます。背理法というのは証明の仕方のひとつです。定理にはまともに証明しようとしてもなかなか難しいものがあります。そういうときに有効な方法です。簡単な例ですが、「X+1≧0 ならば、X≧-1」を背理法で証明してみましょう。X+1≧0 なのに X<-1 であったとしましょう。X<-1 の両辺に1を加えるとX+1<0。これはX+1≧0に反します。よってX<-1 ではあり得ません。つまりX≧-1が成立しなければなりません。易しすぎで背理法のありがたみは分かりませんが、一応証明できました。背理法は日常生活でも使われる議論の仕方ですし、その意味ではこれ以上説明不要とも言えますが、前回の記事の条件文とのつながりで解説してみると……。
「pならばq」は、「『pが真で、かつqが偽』ということはない」と同じことなのでした。これは「pが真であるという事実と、qが偽であるという事実は両立しない」とも言い換えられます。だから背理法では「pが真で、かつqが偽だったらどうなるか」という議論をするのです。「pが真で、かつqが偽」であったとして、仮に妙な結論が出てきてしまったら(1=0とか)、「じゃあ『pが真で、かつqが偽』ということはあり得ませんよね」とやるわけです。さっきの例では「X+1≧0 なのに X<-1」だとするとヘンなことになってしまった、だから「X+1≧0」と「X<-1」は両立しない、すなわち「X+1≧0だとするとX≧-1」が示せた、ということなのです。
ありそうな間違いですが、「pならばq」を背理法で証明するときに「pならばqでないとすると……」とやってはいけません。実際に、ちゃんとしたテキストでこの誤りを見かけたこともあります。背理法の証明の正しい始め方は「pであるのにqでないとすると……」です。