いぬおさんのおもしろ数学実験室

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これでいいのか、対数微分法!?

 以前の同僚の先生で、ぼくに割とよく質問してくれる人がいます。結構イヤなところ(数学上の議論で、前から何となく気になっていても「まあ、よいのだろう」などとあえて無視していた点など)をビシビシ突いてくるので面白いです。2,3日前の質問を紹介しましょう。

 

 対数微分法というのがあります。まともに微分するのは大変なときなど、いったん絶対値を取って対数を計算した上で微分するのでした。例を挙げましょう。次のような関数を考えます。

両辺の絶対値の対数を取ると

微分して

を得ます。yにもとの式を代入すると

となりますが、最後に出てきた結果でx=3を代入することは許されません。ここまでの式変形で★を経由しているからです。

 しかし、最初の式を対数微分法を使わずに微分すると同じ式を得られます。当たり前ですが、こちらではx=3を代入しても問題はありません。

 同僚の先生は、これはどういうことなのか、仕方ないのか、と言うのです。対数微分法を使う人はこんなことは考えずにx=3を代入してしまっているかも知れません。

 

 ぼくは考えた上で次のように返事しておきました。

 もとの関数を通常の方法、商の導関数の公式で微分したものをp(x)としましょう。対数微分法による結果をq(x)としておきます。p(x)とq(x)は式としては同じですが定義域が違います。

 p(x)は連続関数です。つまり式としてはq(x)は連続です。q(3)を計算してはいけませんが、

なら許されます。これは結局「q(x)をもとの関数の導関数として使って構わない」ということを意味します。念のため、今回はp(x)が連続だからこういう議論が成り立ったのでした。

 

 こうしたことを気にする生徒もいると思います。そのときには「面白いことに気づいたね!!」と褒めて、この理屈を説明してあげましょう。これまで多分教員同士でこれが話題になったことはありませんでした。あまり気にしていない人が多いのかも知れません……。