いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

マジック「アンビシャスカード」、難しいことは面白いこと

 「アンビシャスカード」というマジックがあります。マジシャンは観客が選んだカードをトランプひと組の真ん中辺りに差し込みます。指をパチンと鳴らして一番上のカードをめくると観客の選んだカードです。このあと、何回もそのカードをトランプに差し込みますが、やはり一番上から出てきます。ときどき一番下から出てきたり、ジャケットの内ポケットから出てきたり、といったバリエーションもあります。

 十分練習すれば普通のトランプで演じることができます。マジックショップで同じマーク、同じ数字のカードがひと組揃っているトランプも売っています。これを使えばすぐできますが、多分そういうことをする人は少ないと思います。見ている観客は驚くでしょうが、やっている方は全く面白くないからです! 要するに、人間、簡単なことはつまらないのです。単純に道具のありなしでできるできないが決まってしまうのでは努力の甲斐もなく、面白みがありません。トレーニングを積み重ねてテクニックをひとつ憶えるとそのたびに新しい演じ方ができるようになる、現象のバリエーションが増える。何でも新しいことを憶えて使えるようになると世界が広がるのです。マジックを演じるのに何か仕掛けのある道具を使うと素晴らしい効果が出ることもあります。演目に変化も出せますし、ぼくは良さそうなものならまあ遠慮せず使います。でも、それもトレーニングしたテクニックがあればこそ生きるわけで、道具にだけ頼るのはやはり面白いことではありません。

 難しいことが面白いことです。マジックも音楽も数学も同じです。面白さというのはもちろんそれだけではないけれど、困難を乗り越えて何かを完成させる、理解できるようになる、というのは独特です。こんな記事も書きました。 

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今はとにかく易しさ、分かりやすさだけを求めがち、求められがちです。数学も、生徒はちょっと難しいとすぐに音を上げます。まるっきり歯が立たないとこれは辛いですが、面白さを味わうには難しさは覚悟しておかなければならないのは事実です。易しいことなど、面白くないのです。

 学校では盛んに生徒にアンケートをとっています。授業の評価は「分かりやすいかどうか」、「生徒が活発に参加しているか」、……。つまらない!!