ここ10年とかはアニメは絵もストーリーも音楽も、クオリティが大変高くなりました。『天気の子』などは絵がメチャクチャきれい……という感じです。単純に比較しても意味はありませんが、YouTubeなどで昭和30年頃のアニソンなんかを見てみると、現代の作品はとにかく作り込みようが半端ではありません。今はPCも使えますし、ある程度そうしないと見劣りしてしまうでしょう。ストーリーも「我は悪なり」と自ら悪い人が宣言するような話は少なくなっています。敵ではあるけれど、じゃあ悪いやつなのか、というとそう割り切ることができなかったり、味方にも反乱分子がいたり。昔から「正義の味方だが、他の人間たちとは違う大変な力を持った自分にコンプレックスを持っている」みたいなアニメもたまにはありましたが、今では珍しいというわけでもないでしょう。また大抵、ストーリーのどこかに秘密というか、視聴者には分からない謎の部分があり、それが魅力です。音楽も壮大なオーケストラのテーマ曲とか。では「今のアニメの方がよい!」ということになるのかというと、なかなかそうでもない気が……。
『名探偵コナン』もずいぶん長いですね。ぼくの大学時代からもう放送していて、コミックスも当時はそろえていました。今はやはりきれいな絵、壮大な音楽、複雑なストーリーの映画もあります。コナン君の映画は多分全部見ていると思います。いいのも多いですが、しかし昔の話の方が面白かったような気もします。「どうしてだろう?」と思うんですが……古い話は動機がハッキリしていて犯行も直接的(?)、悲惨なストーリーは悲惨なまま、悲しいものは悲しいままちゃんとアニメになっている、と言うか……。表現がストレートでいい感じが。うーん、うまく書けません。もちろん背景だって何だって、今の方が細かく作り込んであるのです。それでも前の方がいいかな……。
『金田一少年の事件簿』も好きです。こちらも古いものの方が好みです。「金田一耕助の孫」というだけあって、あのおどろおどろしい雰囲気が味わえるからです。最初のシリーズより新しいシリーズは絵はきれいになっていますが、初期の頃の方が雰囲気が出ていると思います。考えてみれば、金田一耕助の出てくる映画も、リメイクされた作品は映像自体はもちろんきれいでよい気はするんですが、金田一耕助が泊まる宿屋の様子を始め、あちこちがきれいになりすぎて怖い雰囲気が失われているような気がします。
こういうことを言っているのは年を取った証拠なのか……。でもやはり古い映画、『ローマの休日』などのあの感じ、雰囲気はよいものだと思います。
マジックでも、昔からあるものはプロットは単純なものが多いと思います。例えば、「トライアンフ」は観客が選んだカードをトランプひと組に戻し、半分を表、半分を裏にしてバラバラに混ぜます。トランプを広げてみると1枚を除いて表を向いています。その1枚は観客が最初に選んだカードです……というマジックです。あれこれ、あっちをいじったりこっちに混ぜたり、とやらず、やっていることが単純でスッキリしています。その分、不思議さも際立ちます。話は違うけれど、アニメとそんな共通点がある気がします。