いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

私の勉強法

 ぼくは専門は数学ですが、物理、工学なども好きで本もよく読んでいます。そこで、その辺の勉強法を書いてみます。

①書くことをバカにしない
特に抽象的な話などでは、分かっているつもりが実はまったく分かっていなかった、ということがたくさんあります。理解できない証明、特別な式変形、憶えづらい公式など、何度もノートに書きます。分からない部分をただ眺めていてもダメ。書きながら考え、分かったらもう1回書いて頭を整理します。
②「分かっていたつもりが、あるとき分からなくなった」はチャンスである!
例題などを順に解いていて、さっきまでは分かっていたはずなのに、次の例題を見たら何もかも分からなくなる。定理がいくつも並んでいて、新しい定理を勉強したらひとつ前の定理の意味が分からなくなる。日常茶飯事です。ぼくは「おっ、来た来た!」と思います。チャンスです! 分かるところまで戻って書きながら整理し、改めて考え直します。これでさっきより理解がずっと確実になります。ウソかホントか、「骨折して治ったところは以前より丈夫になる」みたいな。
③狭い場所にギュウギュウに書かない
ぼくのノートは超スカスカです。2、3行使って1本の式を書きます。式変形は、式を縦に並べて書く(横につなげない!)。図も大きく。広々と使えば、あっちとこっちの関係も分かりやすいし、あとで気づいたことを書き込めます。キレイに書いて終わり、ではありません。理解するために書くのです。
④細かいことも気にせよ
数学の議論では、ひと言ひと言に根拠があります。高校生を相手に、式変形で黙ってこっそりΣと∫の交換をしたら「そんなことをしていいのか?」と聞かれました(Σ∫××××=∫Σ××××)。大事なことで、有限項なら大丈夫ですが、無限項の和を相手にするときにはこれ、無条件では成立しません。怪しそうなことを無反省にやる癖はつけないことです。「ホントに正しいのか?」と常に注意を払いましょう。数学ではこれが非常に重要です。
⑤しかし、少しくらい分からなくてもあまり気にしない!
すぐ上に書いたことと一見矛盾するようですが、そうではありません。自分にとって新しい分野だと一回読んだだけでは全体像がつかめず、そのために分からないところもずいぶん出てくるものです。場合によっては「この定理は何を主張しているのか」の方が証明の理解よりも大事な場合がありますし、少し先に進めば「さっきのアレはこういうことだったんだ」と分かるようになることもあります。とりあえず分からない部分は放っておいて、憶えるべき定理は憶え、使う練習はして、……が大事です。全体像の把握に努めましょう。最初は多少雑な部分があってもよいのです。数学者ゲーデルの母親が相対性理論を勉強し始めたとき、ゲーデルは「抽象的な概念を恐れる必要はありません。最初はすべてを理解しようとしないで、小説を読むように進めなさい」と言ったそうです。同じことです。そもそも人間の理解というものは「まず何となく全貌が分かり、その後に細かな部分が理解できるようになる」ものなのではないでしょうか。
⑥数学に興味を持つ!
面白くもないことを10年やったって上達など望めません。面白い!と感じているときが最も実力がついているときです。問題をガンガン解いているとそのうちできるようになり、面白味も分かってくるものですが、それだけではなく、啓蒙書や数学のエッセイ、実力よりも少し高度な内容を扱った参考書や専門書などを探して図書館や本屋さんに足を運ぶとよいと思います。先でどんな楽しそうなことを勉強できるのか見てみれば励みになるはずです。勉強は楽なことばかりではありません。でも、ときどき宝石みたいにキラッと光る何かが見つかるのです。鮮やかな応用、全く関係なさそうに見える事実の間の深いつながり、ビックリするような事実、……。例えば啓蒙書などはそんな「宝石」がどこにあるのか、どんなものなのか、教えてくれるはずです。そして、読めば今している勉強が一体この先どこにつながっているのか、今勉強していることは数学の中でどんな役割・意味を持った部分なのか、そんなことも分かります。勉強の動機になると思います。
⑦試験の対策はする!
数学はひとつです。「受験数学」という数学があるわけではありません。しかし定期試験やその他受験を考える場合、短い時間でたくさんの問題を解くわけですから、そういう練習をしておく必要はあります。高校生で言うとセンター向けの練習、2次試験の対策、どちらも大事です(来年度は「大学入学共通テスト」)。ぼくはこれをほとんどしなかったため、特にセンターでは大失敗しました。
⑧分からないことを恐れない
高校から大学の理系に進んで数学がいきなり分からなくなる、基礎から発展的な内容の本に進んで急に難しくなる、……。例えば高校の数学と大学の数学は違う部分がたくさんあります。大学の数学は抽象的になり、「この定理、一体何を言ってんの?」ということだってあります。新しい概念も次から次へ出てきて混乱に輪がかかります。また議論は極端に厳密になり、それもあって証明も長く、分かりづらくなります。高校で使っている証明法が、雑すぎて役に立たない場面もあります。すごく優秀なある高校の数学の先生が「大学でやっていることは少しも分からなかった」と言っていましたよ。しかし、そういうものなのです。その先、どう食い下がるかが勝負です。分からない、なんて日常茶飯事。大学の先生が女の子の卒業生について話してくれたことがあります。その卒業生の就職先の会社の人が「優秀な学生さんですよ」と褒めてくれたそうです。それほど優秀でもないことが分かっていた先生は「??」と思いましたが、よく聞くと「少しくらい分からないことがあっても全く動じない」のだとか。アハハ、数学をやっていて慣れたんでしょう……。でもこれが大事なのです。
⑨理解したことを何枚かの紙にまとめておく 
人間はせっかく覚えた内容でも放っておくとすぐに忘れてしまうもの。そして、本を読んでいて理解できず引っかかってしまう部分は、ひと月先に読んだとにきにも必ず引っかかるものです。だから、勉強した内容をまとめたもの(短く、分かりやすく。自分がまとめたものでなくても)を持っているのは大事なことだと思います。特に自分にとって新しい分野の場合、先に書いたようにその全体像はまだ分かっていないわけです。そういうときには「どんな公式だっけ?」とか「公式が成り立つための条件は何だっけ?」とか「どんな風に使うんだっけ?」とか、特になりやすいものです。「本文を見りゃいいじゃん」と、公式集のようなものをバカにしてはいけません。情報はバラバラに、どこに何があるのか分からない状態になっていると役に立てるのは難しものです。短い時間で、パッと思い出せるように紙にまとめておくのです。例え忘れてしまっていても、成立する事実が分かっていれば安心です。「細かな証明は後で見ればよい」というわけです。
⑩しかし、一番大事なことは……
話は個人的なことになりますが、学生の頃初めて『無情』というフリーの2Dシューティングゲームを見ました。今でもそのときの衝撃は忘れられません。泣きそうになりました。「こんなモノを作れる人間がこの世に存在するのか!?」と思ったのです。いったいどう作るのか想像すらできませんでした。それ以来、ぼくはソフト作り(プログラミング)を趣味にしています。周りを見てください。分野は何でもよい、必ずすごい人がいるものです。その人がいったいどんなことをやっているのか、よく見てみることです。あきらめず、丁寧に勉強しましょう。そうすれば遙か先に見えたところが、気づけば目の前です。

 

はてなブログ特別お題キャンペーン #学び応援WEEK

はてなブログ特別お題キャンペーン #学び応援WEEK
by ギノ