前、基底を入れ換えたときベクトルの表現(係数)がどう変わるのか明らかにしました。
ポイントだけ書いておくと
によって基底を変換したとき、
であるとすると
で新しい係数を求められる、ということでした。
です。実際に基底を入れ換えて試してみましょう。
が新しい基底です。
であるとして、s、tを求めましょう。
ですから、
で新しい係数が求まります。つまり
となるわけです。
ホントかな?と思って念のために確認すると……
ですから、やはり正しかった!!
数学ですから、証明したことのみが真実です。証明を蔑ろ(ないがしろ)にする数学の勉強はあり得ません。しかし授業で何かの定理を証明しようとしたときに「あ、そういうのは要らないので」と言われてビックリしたことがあるのです。そんなことだから数学ができなくなるんだよ……。常に証明は自分で再現できるのが最善ではありますが、まあ無理です。だからせめて勉強していて出てきた定理の証明は最低限、理解すること。……と、生徒にはそんな話をよくします。証明しないで気持ち悪くないのかな……と疑問です。
……というのは一応の理屈です。実際のぼく自身はどうかというと、もちろん証明は読みます。しかし分からないこともあるし時間がないこともありますから、そういうときはとりあえず定理が正しいことは仮定して進みます。定理を使う練習をして、数学的な主張を先に理解します。それは無駄にはなりません。というより大事なことだと思います。場合によっては証明するより大事な場面だってあるかも知れません。そうすれば証明も理解しやすくなっていることが多いでしょう。
今回は証明した定理が本当に成立しているのか、確認しました。これも同じように大事です。ある数学者は「具体例だと分かりづらいから抽象的な話にしてくれ」と言ったとか。きっとすごく賢い人なのでしょう。1回言ってみたい台詞ですが、まあ普通の人は具体例を見て初めて定理を実感するというのが実際のところでしょう。そして「おー、確かに成立している!」(定理なので当たり前なんですが)というのが次の勉強のモチベーションになるのだと思います。