いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

教員に上の学校の知識は不要か?

 ぼくは教育実習は中学校へ行きました。3週間、辛い日々でした……。いわゆる「指導案」をほぼ毎日書かなければならないんですが、もう形式ばっかりで、まあ「授業をやるのに最もよくできた書類」みたいな話も聞きますが、大変すぎでした。あまりに疲れて、家に帰って風呂に入っているとうっかり寝て湯船に沈んでしまうんですね。バシャッと。

 で、本題。そのときの指導教官はもちろん数学の先生です。色々教わりましたが、「中学校で教えるのに大学の知識が必要なんですかねえ……」と独り言みたいに言っていたのを憶えています。「大学」ではなくて「上の学校」だったかも。うーん、そりゃ、単純に教科書の説明をしているだけなら要らないだろうけど……。ぼくも指導教官をやる歳になって、実習生の相手をしますが、そのときは「勉強しなきゃダメだよ」と強調しています。なぜか。例えば、前こんな記事を書きました。

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何となくの常識でいいなら、「ある区間導関数がずっと正ならグラフはその区間で右上がり」なんて、何しろ接線の傾きがずっと正なのだから右上がりに決まってるでしょ、ということになりそうです。でもある点の近くで無限回波打つ曲線なども存在するのです。そういう事実を知っていれば「いや、こんな話もあるくらいだから簡単に結論は出せないぞ」となるかも知れません。直観の効かないことがある、と分かるはずなのです。でもそんなことも知らないと「右上がりに決まってる」と言われても証明の心配もせず、平気です。生徒にも何の話もできません。もちろん生徒は知らないのですから多分疑問に思う子もいないでしょう。こういう状況、授業をしている人が「それでいい」と思うかどうかです。

 もうひとつ。今やっている勉強は数学の中の一体どの辺なのか、どこにどうつながるのか、そういう説明をするって大事なのではないでしょうか。来年はこうなる、大学ではこうなる、とイメージがつかめれば、今、多少大変でも乗りきれるものでしょう。モチベーションも上がると思います。そういう話を聞く中で「大学ではこういうことを勉強するんだ!」と考える生徒も出てきます。

 

 結局、「教員は先の学校の勉強は不要である」ということにしておけば教員自身は楽なのです。でも自分はそれで本当に納得しているのか、ということです。せっかくいろいろ教えられる立場にいるのだから、面白いことをたくさん話してやればいいのに……と思います。4月から新しいクラスを持ちますが、ぼくはこのブログで書いているようなことを1日に2つくらいずつ話すつもりです。数学通信も書いて……と楽しみです。