いぬおさんのおもしろ数学実験室

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太陽の近くでは時間がゆっくり進むことの説明

 太陽の近くを光(の束)が通過します。束の先頭は図でAA'、BB’、……、EE’と進みます。観測の結果によると、図のように光は太陽の近くでは直進せずに曲がったコースを進みます。アインシュタイン一般相対性理論の帰結として光が曲がることを予言していたといいますが、ここでは「光速度不変の原理」のみを仮定し、それと「太陽の近くでは光が曲がる」という事実をもとにして少し考えてみます。なお、これはぼくが学生の時の相対性理論の講演会で聞いた話です。

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 電車の速さは、歩いている人が測定すれば速く、併走する車に乗っている人が測定すれば遅く観測されます。しかし光は特別で、どういう条件でも一定で毎秒30万kmなのでした(光速度不変の原理)。太陽の近くでも離れたところでも速さは同じです。さて、光の先頭はAA'、BB’、……と進みます。束の上の端の部分は曲線ABCDEに沿って進み、下の端の部分は曲線A’B’C’D’E’に沿って進みます。曲線ABCDEは曲線A’B’C’D’E’より長いですから、光速度不変の原理によれば(それと公式「距離/光の速さ=時間」によれば)曲線ABCDEの辺りでは曲線A’B’C’D’E’の辺りより時間がより多く流れていなければなりません。太陽から遠いところでは近くよりも重力が弱いことは分かっていますから、結局重力が弱いところでは強いところよりも時間が速く流れているはずだ、と分かります。

 単純な議論で「重力が強いところでは時間はゆっくり進む」という重大な結果が出てきたときには「うーん」と唸ってしまいました……。