いぬおさんのおもしろ数学実験室

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ノミは体長の200倍跳ぶ!……って凄いことなのか?

 物理の本なのですが、何の本だったか、もう思い出せません。手元にも多分なく、記憶も曖昧です。しかし面白い話で、大体の雰囲気は覚えています。再現してみて、怪しそうな部分は理屈で考えます。ネットで調べたらやはり体長の200倍みたいですね。これだけ聞くと何だか凄そうです。でも本当に凄いのでしょうか。

 ノミだと難しいです。大きい人間と小さい人間、で考えます。大きい人でも小さい人でも、まあ概ね形は同じでしょう。つまり相似な立体と考えてよいでしょう。身長xの人間がどれだけ跳べるのか調べます。

 人間、誰だって密度は大して変わらないでしょう。つまり体重(質量)は体積に比例します。つまり次が分かります。

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(以下、x以外の文字は比例定数として)体重と同様に、

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も分かります。筋肉の性能は断面積に比例するでしょう。筋原繊維?の量が問題だからです。つまり

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 が分かります。また、

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 も分かりますから、ジャンプ中に筋肉が体にする仕事は

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重力の位置エネルギーは、質量m、重力加速度g、高さhとしたときにmghなのでしたから、

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①、②が等しいので

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よって

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これは跳べる高さhは身長xによらないことを意味します。つまり小さい人でも大きい人でも跳べる高さは変わらないのです。もしも「跳べる高さは本来身長に比例するはずだ」などということがここで明らかになったのなら、ノミよりずっと大きな人間はずっと高く跳べるはずで、比べればノミは凄いということになります。しかし上の式の通り、跳べる高さは身長によりません。人間もノミも同じだけ跳べるはずなのです。で、実際に人間とノミは跳べる高さにたいした差はないでしょう。数十センチですよね。当たり前の結果だと言うことです。

 要するに関係ないもので比べているのです。身長に比べて高く跳べる、という比較が無意味なのですね。考えてみれば「彼は1月生まれだ、だから賢いのだ」とか「彼女は声が高い。だから根気強い」とか主張すれば笑われてしまいます。そりゃ関係ないでしょ、ということです。

 実際にはノミと人間は相似ではないですし、筋力の発生のメカニズムも全く異なるでしょう。だからここで議論したことはこのままでは通用しないかも知れません。しかし最初の近似としてはまあまあなのではないでしょうか。