いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

『不確定性原理』紹介

 50歳台以下の理系で学んだ人たちは結構、講談社ブルーバックスを読んでいるのではないでしょうか。ぼくは中学3年生くらいから読み始め、今に至っています。通学の電車の中、学校の休み時間など、時間を見つけては「むさぼり読む」という感じでした。自然科学に関わる職業の人で、「ブルーバックスの××を読んで影響を受けた」といった話をする人にときどき出会います。知らない世界を分かりやすく紹介してくれたり勉強の仕方を教えてくれる啓蒙書は、それだけではない大事な役割を持っています。若い人たちの勉強のモチベーションになることです。時間があるので、若い頃していなかった勉強もしたいと考えています。 そのうちのひとつが量子力学です。面白かった本を紹介しましょう。

  量子力学というのはミクロの世界(素粒子など)で成立する物理学です。例えば原子内の電子の行動はニュートン力学では説明できません。量子力学の考えが必要なのです。これが現代でも大変重要で、例えば量子暗号、量子コンピュータにつながっています。この本はなぜ量子力学が必要なのか、どんな感じなのか、イメージを教えてくれます。ラプラスの悪魔というのが出てきて、これが高校生のぼくには衝撃的でした。ニュートン力学では物体の運動についてはある時点で世界に存在する物体の位置、質量、速度などの初期値を与えられればその後(過去も)の任意の時点での位置、速度などは全て確定しています。ニュートン万有引力の法則、運動方程式で決まるのです。ラプラスという数学者はそういうことを言ったのだそうです。現実にはその初期値を調べる方法はありませんし、計算の能力にも限界がありますが、そういうことを可能にする存在(ラプラスの悪魔)がもしあればラプラスの言った通りということになります。『不確定性原理』では実はそれは無理なのだ、ということが説明されています。それも「大変だから無理」なのではなく「原理的に無理」だというのです。量子力学の教えるところによると、速度と質量を同時に正確に測定することは不可能なのです。不思議な話です。若い頃にちゃんと勉強しておけば……とも思いますが、勉強に「遅過ぎる」なんてありません!! がんばります。