実数全体の集合は可算ではありません。つまり、自然数全体の集合と1対1に対応がつけられないのです。それほど要素が多い、ということです。同じ「無限」なのに不思議な話ですが、仕方がありません。無限にも程度があるのです。今回はこれを証明します。
実数全体に1番から順に番号がついたと仮定しましょう。すると0以上1以下の実数にも番号がついており、これらに改めて番号の小さい順に1番、2番、………と番号をつけ直します。これを番号順に次のように並べます。
そして、波線の桁に注目して、次の実数#を作ります。
この実数、(#)は上の表のどこかに載っているはずです。0以上1以下の実数だからです。こうして作った実数(#)は、1番の数とは違います。小数第1位が異なるからです。2番目とも異なります。小数第2位が異なるからです。……従って(#)はこの表のどこにもありません。これは矛盾です。つまり実数全体には番号はつけられない(番号がつけられないほど多い)のです。この証明法はカントールの対角線論法と呼ばれます。数学の中であちこちに出てきます。ゲーデルの不完全性定理の証明などにも出てきて極めて重要な役割を果たします。
カントールはさらに「どんな無限集合に対しても、それより濃度の大きい集合がある(カントールの定理)」を証明します。具体的には集合Sに対して、そのべき集合(Sの部分集合全体の集合)を作ればその濃度はSの濃度よりも大きいのです。これを繰り返し使えば、「無限には無限の段階があり、どんな無限集合に対しても、それよりも大きい無限集合がある」ということが分かります。
集合論の入門書としては次が素晴らしい!
ぼくは『集合論入門』 (赤摂也1959培風館新数学シリーズ)を読みました。それが文庫で出ています。「こんなに分かりやすい数学の本があるのか……」という印象です。基礎から始まり、超限帰納法、整列可能定理、ツォルンの補題まで解説されています。文庫も買ったので勉強し直してみます。