いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

半径1の円周上に間隔1で無数に点を打つと、どんなに短い弧の上にも点がある

 半径1の円があります。円周は2πですね。円周上に定点Aをとります。Aをスタートし、円周上を(円周に沿って)距離1ずつ左回りに回る点Pを考えましょう。Aから始め、円に沿って距離1だけ回ったところの点をP_{1}、そこから距離1だけ回ったところの点をP_{2}、……とするわけです。もちろん点は無数に決まります(なぜか? 以前に打った点に一致してしまうことはないのか?)。さて、このとき、円のどんなに短い弧の上にも、必ずA,P_{1},P_{2},P_{3},……のうちのどれかが乗っていることを証明してください。

 意味が取りにくいかも知れません。円周の一部、非常に短い弧を考えます。例えば長さ0.001の弧です。その上には例えば点P_{28} があります。別の、長さが0.0000003の短い弧を考えます。この上にも例えばP_{176} が乗っているのです。どんなに短い弧の上にも点が乗っていることを示して欲しい、ということです。ある数学の本に「証明されている」とだけ書いてあって、証明自体は載っておらず、しばらく考えさせられました。「自分で考える!」という元気のある人はこの先は読まず、自分で答えを出してから見てください。

 さて、証明です。背理法でやります。円周上のある弧XYの上にはA,P_{1},P_{2},P_{3},… …のどの点も乗っていないと仮定します。そして、矛盾を導けばよいのです。弧XYの長さを0.1とでもしておきましょう。A,P_{1},P_{2},P_{3},……の中には、必ず距離が0.1未満の2点があるはずです。点は無数に打つのですし、同じ位置には打たれませんから、「どの2点も距離は0.1以上」は成立しないのです(そうでないと、点が有限個になってしまう)。そこで、その2点を例えばP_{102},P_{245}としましょう。この2点間の距離は0.1未満、例えば0.09とします。P_{102}に続き143点打てば距離0.09だけ離れた点P_{245}を得られるわけです。すると、そこからさらに143点打てばまた距離0.09離れた点P_{388}を得ます。こうして距離0.09ずつ離れた点を打っていけば、いずれは弧XYにたどり着きます。そのとき、弧XYの長さは0.1、打つ点は間隔0.09なのですから、弧XYの上に点が打たれてしまうはずです。これは「弧XY上には点が打たれていない」という仮定に反します。以上です。

 分野にもよりますが、数学ではこんなたぐいの議論をたくさんやります。