もうずいぶん前、5千円札、1万円札に聖徳太子の肖像が使われていました。いや、実は違うそうですね。聖徳太子ではない、と。ぼくたちは「聖徳太子」と習いました。初めて「実は違う」と聞いたとき、びっくりしました。教科書にまで載っていて全国の受験生たちが覚えるこの肖像画の主が実は聖徳太子ではなかった。……って、じゃあそもそもいったいどういう話で「聖徳太子」ということになったのか? 歴史の先生に聞いたら「絵は昔から法隆寺にあったのだが、伝説」とのこと。いいんですか、こんなんで!? 数学を見てください。いろんな定理があります。「そんな定理、信用できない」と言われないよう、定理には証明があります。基本、どんなに意地の悪い人でも納得せざるを得ないのが定理の証明。「ホントかな?」と疑いを持ったら証明を読めばいい。だから信頼できるのです。数学には、他に基礎にできる自然科学がありません。例えば物理は全面的に数学に頼っています。しかし数学には頼るべき他の科学がなく、だから厳密さを大事にするのです。歴史は自然科学ではないですし、数学の特性も関係します。単純に比べても意味がないかも知れません。しかしいくらなんでも「伝説」って……。「聖徳太子だけの話だけでしょ。他は大丈夫」というわけにはいきません。
念のため、ぼくは歴史は嫌いではないのです。池上さんの本を読んだりもしますし、数学史、科学史も好きです。歴史が専門の人にも言い分はあるかも知れないし、ぼくは専門ではないから、ことによると何か間違いを書いているかも知れません。気づいたら教えてください。