いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

Σの記法について

 行列式というのがあります。高校生の皆さんは理系に進めば勉強することになるでしょう。今回はただのお話なので細かいことはいいのですが、下のように書かれたりします。

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Σの上下に何も書いてありません。この式でi,j,kは1,2,3の全ての並べ替えです。つまりこの式は6項の和なのです。i = 1,j = 2,k = 3のときの項、i = 1,j = 3,k = 2のときの項、………という具合で、6項になるわけです。Σを使うのだから本来、変数i、j、kがどういう値を取るのかちゃんと書かなければいけないはずです。でも、書きようはありますが(「置換」というものを使ったりする)面倒くさく、実際には誤解も生じませんからこれで済ませてしまうことがあります。
 もうひとつ例を。次のような和を考えることがあります。

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添え字が文字の上下についています。数列みたいなものですが、今、意味は置きましょう。Σの約束によると上の式の通り、i = 1のときの項、i = 2のときの項,i = 3のときの項の和を意味します(j、kの値は変えない)。しかしこういう式がたくさん出てくる場合、いちいちΣを書いていたら面倒くさいし見通しもよくありません。そこでΣを書かず次のように略記してしまう方法があります。

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アインシュタインの規約と呼ばれます。ジョークですが、アインシュタインはこの記法について「数学における私の生涯で最大の発見」と言ったとか。「上下に同じ添え字(ここではi)がついていたら、(Σは省略して)iを必要な範囲で変化させた和を取る」という約束です。楽ですし、分野によっては使われます(と言うより、これがないと大変過ぎて辛い……)。
 記号は書き手と読み手の間で誤解が生じなければそれでよいのです。高校では数学の先生は「iの範囲の省略など絶対にダメ!!!!」とか「Σを書かなければバツ!!!!」とか言うと思います。そう言ってもらわなければ困りますし、試験だったら減点とかバツになるとかでしょう。しかし「何が何でもダメ!」というのは絶対の真理でも何でもありません。これを「とにかくダメ! 決まりなんだから!」とか言って終わりにしてしまうから話が変になるのです。前、ノットイコールの話も書きました。 数学の内容について話したいのに、こんなのばかりだと疲れます……。