最近は大学1,2年くらいで勉強する内容が分かりやすく書かれた専門書がたくさん出ています。『力学 (物理入門コース1)』(戸田盛和1982岩波書店)を紹介しましょう。
写真は新装版です。古いものは学生時代に、新装版は2,3年前に買いました。多分これを1冊勉強すれば力学の基礎が身につくと思います。大学1年か2年でやる内容でしょう。ひと通り勉強したはずですが忘れている部分も多いです。数学もいいんですが、こういうテキストを眺めていると本当に面白そうです。運動方程式、惑星の運動、ケプラーの法則、回転する座標系、……目次を見ただけでワクワクします。もちろん物理の本ですから重積分、線積分など、遠慮なく出てきます。でもきちんと説明されており、計算に困ることはないと思います。数学の本だと厳密すぎてそちらにエネルギーを使い切りそうな感じになってしまいますが、物理の本ですし、そういう心配は要りません。
物理をやるにしろ数学をやるにしろ「だいたいこんなもの」というイメージを持つことは大切です。読んでいて「ああ、あれね」という感じで、要するに「怖くなくなる」。厳密にやらないとまずいところはどんな分野だってありますが、同じくらい、全体のイメージを捉えることは大事でしょう。物理というのは物理現象がそのまま式になっていてその辺が面白いところです。
故・矢野健太郎先生(微分幾何学者)は、物体に重力だけが働いているとき、軌道は楕円運動などの円錐曲線になることの証明を読んで、うーん、と唸ってしまったそうです。こういう驚きの積み重ねが次の勉強のモチベーションになるのですね。この本でも取り上げています。高校までの物理も面白いのですが、やはり使える数学に限界があって、式で攻めることができません。
戸田先生の本は何冊か持っています。どれも、難しい内容でもスッキリ書かれていて読みやすい印象です。特にこの本はとにかく分かりやすいです。勉強し直してみようと思いました。