いぬおさんのおもしろ数学実験室

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『新・地震の話』(坪井 忠二1967岩波新書)紹介、マグニチュードに限界はあるのか?

 『新・地震の話』(坪井 忠二1967岩波新書)を昔、読みました。大学の講義で面白い話があり、そこで紹介されていたのです。地震マグニチュード(規模)の最大値は9くらいだそうです。確かに、「マグニチュード28」とかは聞いたことがありません。なぜなのでしょうか。本はもう手元にありませんし(多分引っ越しで処分したかも)、大体のところを記憶で書きます。

 地表に適当な広さの円を考えましょう。例えば半径1kmです。そのすぐ地下に半径1kmの球を考えます。地殻を構成する岩盤は力を受けて変形し、それが限界に達すると破壊します。そのとき、それまでに貯まったエネルギーが解放されてそれが地震になるのです。岩盤が単位体積当たりに蓄積できるエネルギーは限界がありますから、半径1kmの球が貯められるエネルギーの限界も計算できます。これでマグニチュードの限界が分かるのです。

 話を初めて聞いて、「おお、これは凄い!」と思ったのと同時に「いや、待てよ……?」。どうして球なのでしょうか。それよりまだ立方体を考えた方がいいような気がします。でもよいのですね。いや、「正しいのだ」と言うわけではありません。「仮に球が破壊されるエネルギーが地震を起こすのだとすれば」と考えればよいのです。「そういう仮定の下では一応こう考えられる」という姿勢なのだから科学的です。それよりもぼくにはとにかく「理詰めで考えてここまで分かるんだ!」という感動が大きかったです。この理屈は現代では通用しないのかもしれません。新しい観測結果などに基づくいろいろな理論があるんでしょう。でもそういうことではなく、何十年も前(もとの本『地震の話』は1949年に出ました)、地震のデータも今に比べれば精度も量も足りなかった頃、こんなことを考えた人がいたという事実が凄いと思うのです。

 他にも興味深い話はありました。「関東大震災」はあっても「日本大震災」はありません。なぜでしょうか。ある程度以上の大きさの地震が起こる面積には限界があるのではないでしょうか。これについても議論しています。こちらも現代でどうなのか、分かりません。

 また読んでみたくなりました。 

新・地震の話 (1967年) (岩波新書)

新・地震の話 (1967年) (岩波新書)