いぬおさんのおもしろ数学実験室

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大谷選手の「あとひと伸びでホームラン」はどのくらい大変なのか

 大谷選手、メジャーリーグで頑張ってますね。試合を見ていると、「惜しい、あとひと伸びでホームランだったのに!」ということがあります。あれ、ひと伸びするのとしないのとでは、例えば運動エネルギーでどの程度違うのでしょうか。あるいは、打ったときの打球の速度でどの程度の違いがあるのでしょうか。
 球場で、ホームからセンターのフェンスまでの距離をx(m)とします。大谷選手は高さa(m)の点でボールを打つとしましょう。また、打球の(打った瞬間の)速さをv(m/s)、打ち上げの角度は水平面から測ってθであるとします。図のような感じです。

 以下、数値が出てくる式では端数処理はやや適当にやっています……、ごめんなさい。ホームからフェンスまで、球が水平方向でx(m)飛ぶのにt(s)かかるとすると、

(v cos⁡θ )t=xが成立します。これより

となります。打ってからt(s)後の高さh(m)は、

です。ここで、g (=9.8m/毎秒毎秒)は重力加速度です。②に①を代入して次を得ます。

ここでa=1 (m)、x=126 (m)、θ=38°とおいてみると

よって

 大谷選手の場合、打球の速さは最速52.8 (m/s)くらいだそう。xはメジャーリーグの広い球場の値を使いました。θはやはりネットで大谷選手の例を調べました。
h=3, 4でvを計算するとそれぞれv=36.0, 36.2です。センターのフェンスを地面から高さ3mで越すのか、高さ4mで越すのか、の違いです。これをどう判断するか。時速で129.6km/h、130.3km/h。じゃあ、運動エネルギーではどの程度の差なのか? 硬球の重さ(質量)は0.145kg程度です。運動エネルギーは

ですから、それぞれ93.96、95(J)です。差はおよそ1(J)。重力の位置エネルギーはmghですから、これは100gの物体を1m持ち上げるのに要するエネルギーに大体一致します。
最後の位置エネルギーで考えると「意外に小さい差なんだ……」という感じがします。しかし、そもそも彼らは限界のパワーで打っているのだから、そのときの1(J)の差は実は大きな違いなのかも知れません……。

 

追記:

 なんとなくの話でよいなら、「フェンスを越える辺りの球速はあまり変わらない」という前提で、単純に位置のエネルギーの差がボールのエネルギー差になります。ここではある程度正確に調べました。

 なお、空気抵抗は考慮していません。実際にはまずいのでしょうが、大変そうなので無視して計算しました。