いぬおさんのおもしろ数学実験室

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『マックスウェルの悪魔』紹介

 前、簡単に紹介しています。もう少し書きます。今は新装版が出ています。高校生のとき、古い版を読みました。そのときぼくが全部理解したのかどうかは極めて怪しいと言わざるを得ませんが、もう面白かった!

 コップに砂糖と食塩が混ざった溶液があります。成分に分けるには化学的な方法によって分離しなければなりません。実現するにはそれなりのエネルギーが必要です。そこでマックスウェルの悪魔が登場します。物理学者マックスウェルがそういう存在を考えたのです。この小さな悪魔はコップの中を2つに仕切り、仕切り板に小さな窓をたくさん開けます。砂糖の分子や食塩のイオンは運動していますから、ときどき窓にぶつかります。そのとき悪魔は右側に食塩、左側に砂糖が集まるように、窓をうまく開け閉めするのです。時間はかかりますがだんだん砂糖、塩に分かれます。同様にコップの水で、速く運動している分子と遅く運動している分子を分けることもできます。もともと、例えば20℃の水でも分子によって運動の速さは様々なのです。その平均で水の温度が決まるのでした。悪魔は単に窓の開け閉めをするだけでコップの右半分を熱く、左半分を冷たくすることができます。これは極めて重大なことを意味します。温度差を作れるのだから、これを利用して発電できるのです。本来、温度差があればそれを解消する方向にしか熱量は移動しません。これが物理の法則です。逆に移動させるには相応のエネルギーが必要なはずなのに、悪魔は窓の開け閉めだけでその基本的な物理法則に逆らったことができるのです。

 『マックスウェルの悪魔』ではエネルギーに困らなくなった人類は繁栄しますが、そのうちに悪魔と仲違いし、エネルギーも尽き、……と話が続きます。 

 今、手に入るのはこの新装版です。ぼくは下の古いのを読みました。

 表紙のイラストも懐かしいです。「ああ、物理というのはこんなに面白いものなんだ」と思いました。著者、都築先生は他にもブルーバックスにいくつも面白いものを書いています。もう亡くなっていますが、「面白い話を紹介したい!」と考えていたのだと思います。当時で700円かそこらではなかったでしょうか。安いけれど、夢が詰まっていました。これぞ啓蒙書!

 実際には分野としては物理の統計力学に属する話で、ぼくはきちんと勉強したことがないのでちゃんと言えませんが難しいのかも知れません。今は統計力学の専門書でも分かりやすそうなのがいくつかあります。もう買ってあって、いつ読もうかと考えているところです。