赤道上の各点で海抜高度を考えましょう。ある場所は0m、別のある場所は120m、また別の場所は-30mとかです。さて、問題です。このとき、ある点とその真向かいの点(地球の真裏にある点)で、高度が等しくなる、そんな点のペアがあることを証明して下さい。赤道上の点の位置を経度で示すことにしましょう。例えば経度30°の点と、経度210°の点(真向かいにある2点です)はどちらも高度75mとかになっている、そんな点があることを示せ、ということです。
0°の点をA、180°の点をBとしましょう。Aの高度は100m、Bは30mとでもしておきます。点P、Qがそれぞれ点A、Bを出発して同じ向きに同じ速さで回ります。PはBを、QはAを目指します。Pは最初100mの高さでした。Bまで移動すると、高さは100m→30mと変化します。Qもその間、同様に30m→100mと変化します。PもQも高くなったり低くなったりするでしょうが、どこかで最低1回はP、Qは同じ高さにならなければなりませんよね。これが答えです。
数学的には中間値の定理というのを使って証明することになります。Pが経度θの位置にいるときの高度をp(θ)、そのときQは高度q(θ)とします。f(θ)=p(θ)-q(θ)とおきましょう。
f(0°)=p(0°)-q(0°)、
f(180°)=p(180°)-q(180°)=q(0°)-p(0°)=-f(0°) ……★
であることに注意して下さい(θ=0°のときとθ=180°のときとでは、P、Qの位置が入れ替わるからこうなる!)。f(0°)=0ならもう証明すべきことはありません。p(0°)=q(0°)だからです。そこでf(0°)≠0としましょう。このとき★より、例えばf(0°)>0、f(180°)<0が成立しているはずです。これは最初正だったf(θ)が、半周したときには負になっているということを意味します。すると途中で最低1回、f(θ)=0になる瞬間があったはずです。そのときf(θ)=p(θ)-q(θ)=0なので、これで高度の等しい真向かいの2点が見つかりました。
なおf(θ)が連続関数であることは仮定しています。中間値の定理によれば、閉区間[0,180]で連続な関数 f(θ) が f(0) > 0 、f(180) < 0 を満たすとき、f(θ) = 0 となるθがこの区間に存在するのでした。
後半の証明は『数学を決める論証力』に載っていました。なかなか面白い!!
しかし「論証力」というコトバは少し気持ち悪い……。