大学には教職科目(教員免許を取るのに必要な科目)というのがあります。免許が欲しい人は教科に応じたものを勉強しなければなりません。中には面白いものもあります。教科教育法みたいな科目では、いかにも面白そうな(授業でも使えそう)数学の問題を教えてくれたり。しかしぼくはとにかく心理学関係の科目が嫌でした。例えば…「ピグマリオン効果」というのを聞いたことがあるでしょうか。教師が「この生徒たちはきっとできるようになる」と信じて授業をすれば成績があがりやすい、という事実を指すようです。そして、教師が期待しなければ成績が下がりがちである、というのを「ゴーレム効果」と言うそうな。
そう言えば……確かに、ぼくが割と仲良くなったクラスの授業で試験の返却のたびに「いやー、君たちは本当にできないね」「これが君たちの平均点、ってことでいいですね?」などと話していたことがあったのですが、生徒が「先生が『君たちはできない』と言い続けていたから本当にできなくなったんだよ!」と言っていました。実際に平均点は低かったし、お互いに冗談だと分かっていればいいと思うんですが、今にして思えばこれが「ゴーレム効果」なのかも……。
しかし、率直に言って「ピグマリオン効果」みたいなことを研究していったいどうしようというのか、ぼくには分かりません。「ピグマリオン効果」なんて知らなくても、教える側が期待していれば成績は上がりそうに思えます。当たり前、という気も。実際には否定する研究もあるようですが、どっちにしても人間、そんなに単純(期待すれば成績が上がる!)なものでもないでしょうし、そもそも成績を決める他の要因がたくさんあるでしょう。心理学を「どうってことのない事実に凄そうな名前をつけているだけ」と評している大学の先輩がいました。うまいことを言う、と思いました。
ぼくはちゃんと勉強したのではないですし、本当はもっと面白い部分はあるのかも知れません。きっと、脳科学などと結びつけるとかして発展しそうな分野もあるでしょう。まあでも個人的にこれまで授業を受けてきて今回書いたような感想を持っているのだから、進路を考えている生徒には正直に話しています。もちろん「絶対やめなさい」ではなく、今回書いたような内容を、です。
「心理学」と言っていいのか分かりませんが、人間の精神には自我、超自我、エス(本能)という3つの働きがある、といった話はそれなりに面白いですし、こちら方面の知識があれば多分ある程度人間の心の動きを説明できたりするのでしょう。一概に「心理学はつまらない!」と言いたいわけではないのです。「数学は社会に出てから役に立たない」と生徒はよく言いますが、そりゃ朝起きて出勤して……には役には立たないでしょうが、数学がなくなったら世の中は原始時代に逆戻りです。教科の特性、分野の特性などもあるけれど、やはり心理学と比べてしまいます。
追記:
ハロー効果というのもあります。例えば有名な大学を出ている人が何か言うと信用されやすい、とか。要するに、本来関係ないはずだが何となく引きずられて判断してしまう現象。これも、そりゃそうでしょ、という気がします。