隣合う項の符号が違う数列の和を交代級数と言います(あるいは交項級数)。要するに正の項と負の項が交互に並んだ数列の和です。今回はこの交代級数について書きます。
さて、準備。まず用語です。
数列{}が定数Mに対して (n=1,2,3,…)を満たしているとき、{}は上に有界であると言います。どの項もM以下なので、上には限界があるわけです。そして、≦≦≦≦……であるとき、数列{}は単調増加であると言います。このとき、次の定理が成り立ちます。
上に有界な単調増加数列は収束する。
ほぼ明らかな事実、と言ってもいいでしょう。項の値が増えてゆく数列があり、しかも頭打ちになっている。そういう数列はどこかに収束する以外にないはずだからです。ここでは証明はしません(この主張を公理とする流儀もあります)。難しいわけではありませんが証明するには実数についてきちんと考察することが必要です。上に有界な単調増加数列の例をひとつ。例えば数列{1-}がそうです。0,,,,……という数列です。この数列は収束します(極限値は1)。
この定理を用いて、次の交代級数★が収束することを示せます。
1ー+ー+……… (★)
★の第n部分和をとしましょう(級数の最初のn項の和を第n部分和というのでした)。=+(-)なのでが成り立ちます。また=+(-)なのでが言えます。以下同様で、……が成立します。従って数列……(以下、数列★★と呼ぶ)は単調増加です。次にこの数列が上に有界であることを示しましょう。
<1,
=1+(-+)-<1,
=1+(-+)+(-+)-<1,
…………
ですから、<1が成立します。よって数列★★は上に有界です。これで★★は上に有界な単調増加数列であることが分かりましたから、上で紹介した定理を用いて収束することが言えました。その極限値をSとすれば→Sです。最後の詰め、→Sを示せば終わりです。=+でn→∞とすれば、(右辺)→S、よって(左辺)=→Sとなります。以上で→S、→Sが示せたので、結局→Sと分かりました。収束先のSは、知りたければ別途求める必要があります(実はS=)。なお、同じ論法でもっと一般的な次の定理が証明できます。
数列★は驚くべき性質を持っています。級数の各項を絶対値で置き換えた級数をもとの級数の絶対値級数と言います。そして、もとの数列が収束し、絶対値級数は発散するとき、もとの数列は条件収束する、と言います。このとき、条件収束する級数は、うまく項の順番を変えると100にでも570にでも、好きな値に収束させることができ、また発散させることもできるという定理があるのです。実は★からつくる絶対値級数は発散します。そして★そのものはここで示したように収束します。従って★は条件収束です。だから★は、順番を変えると100にでも何にでも収束させることも、発散させることもできます。
理系なら大学ですぐ微積分をイヤと言うほど仕込まれます。授業でどの程度までやるかは色々でしょうが、テキストには必ずここで書いたような話は載っているはずです。しっかり勉強すればこの定理(条件収束級数の)をはじめとして、「ホントか……??」と驚くような事実にたくさん出会えます。