条件付き確率とは何でしょうか。教科書通りでいいなら「Aが起こったときのBの起こる確率を『Aが起こったときのBの起こる条件付き確率』と言う」となります。しかしこれは誤解を招きやすい表現です。Aが起こったときのBの起こる条件付き確率は記号で
と書くのでした。この小さな「A」はBの起こる確率を計算する前に仕入れた情報なのです。P(B)を求めなさい、と言われたらとにかくBはいくらの確率で起こるか求めればよい。しかし「Aが起こったときのBの起こる条件付き確率は?」と言われたら、Bの確率を計算する前に「Aが起こったよ」と誰かが教えてくれたということなのです。「Aが起こったよ」と聞けば、「ああ、じゃあBはこういうケースでしか起こらないな」とか「それならBはかなり起こりやすくなるな」とかいろいろ考えることができるのですね。単純にBの起こる確率を求めるのとはわけが違います。もうひとつ、よく
と言われます。「どっちにしてもAもBも起こっているんだから同じでは?」ということのようです。違うのです。前者は「A、Bがともに起こる確率は?」と聞かれているのだし、後者は「『Aが起こった』という情報を仕入れたとします。このときBの起こる確率は?」と聞かれているのだから意味が異なります。あるいはぼくはこう答えることもあります。
「ぼくがサイコロを1個、こっそり振ります。『偶数かつ4以上の目が出ている確率は?』と聞かれたら(2/6=)1/3でしょう。これに対し、ぼくだけがチラッと見て、君に『偶数の目だよ』と教えたらどうなるか。続けて『4以上の目が出ている確率は?』と聞かれたら、答えは2/3でしょう」
つまり確率を計算する前提がかわるのです。ここでは目が偶数だけという前提ですから、2,4,6の中で4以上の目である確率を求めればよいということです。
さて、この条件付き確率とベイズの定理を使う少し面白い問題をひとつ。
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あるパーティが行われます。Xさんがパーティーに行く確率はこれまでの出席率から見て3/5です。Yさんはウソつきで、何か聞かれたとき正しい証言をする確率は3/4です。パーティーが終わって、Yさんは「Xさんはパーティーに出席していた」と証言しました。このとき、Xさんがパーティーに出ていた確率はいくらでしょうか。
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事象A:Xさんがパーティーに出席する
事象B:Yさんが「Xさんはパーティーに出席した」と証言する
として、ベイズの定理の定理をそのまま使ってもよいですが、ここでは以前に紹介した表によって解きます(実質、ベイズの定理を使うのと同じこと)。
これに習って表を作ると次の通りです。
あの欄には「Xさんが出席し、かつYさんが『Xさんは出席した』と証言する」確率を入れるのでした。乗法定理で上のようになります。答えは あ/(あ+う) =9/(9+2)=9/11。ウソかホントか分からない証言にしては結構あてになるのですね……。