大工さんが使う道具に曲尺(かねじゃく)というのがあります。直角に曲がった物差しです。名前は知らなくても家を建てている現場で見たとがあるかも知れません。表には普通の目盛り、裏面はその√2倍(≒1.41倍)の間隔の目盛りがついています。例えば、裏面の目盛りで1.41cmと読み取ると実際には1cmなのです。今、断面が円である木材があったとしましょう。断面に曲尺ABCを当てています。このとき、ACは断面の直径になります。円周角が直角ならば対応する弧は半円だからです。このとき、曲尺をくるっと裏返しにして(√2倍の間隔の目盛りの面を上にして)ACの長さを測ります。これが例えば実際の長さがAC=14.1cmだったら、裏面の目盛りでは10cmと読めるはずです。この10cmというのは、ACを対角線とする正方形の対角線の長さです。つまり、この木材から切り出せる一番太い角材(断面が正方形の)の1辺が分かるのです。あ、正方形の1辺が10cmなら対角線は10×√2≒14.1cmですよね。念のため。
この話、『数学のおくりもの』(矢野健太郎1980旺文社文庫)にあります。通学の電車の中でこんなのを読んでいました……。懐かしい……。