アリスタルコス(紀元前310年~紀元前230年頃、古代ギリシャの天文学者、数学者)は太陽と地球の間の距離を求めるため
を示したそうです。関数電卓によるとsin3°≒0.05233595……なので、確かに成立はしています(1/20=0.05、1/18=0.0555……)。sinの値のうちぼくたちが知っているのはほんのいくつかしかありません。sin30°=1/2とかsin90°=1とかだけなのです。だから、さっきの不等式が本当に成り立つのか、すぐには分かりません。
sinの値は単位円(原点中心、半径1の円)で、y軸の目盛りで読み取るのでした。図を見ながら考えてください。
で、角が同じθだけ増えてもsinの値は図から分かるように増え方が違うのです(0~θまでよりもθ~2θまでの方が増え方が少ない)。同様で、sin3°の値を10倍するとsin30°の値より大きくなります。つまり sin 30°< 10 sin 3°……★です。
sin30°=1/2ですから、★の両辺を10で割れば1/20<sin3°となるのです。
『古典数学の難問101』(小野田博一2016日本実業出版社)にあった問題です。「難問」とありますが易しいのもあり。高校生にいいと思います。後半、数学Ⅲの積分の知識などが必要な部分が結構あります。学校で使う問題集などとは少々違い、「おっ!?」と興味をひかれる問題が少なくありません。
不等式の右半分の証明については書いてありませんでした。みなさん、自分で考えてみてください。図形的でなくてズルみたいな気もしますが、それでよければ以下のような方法が。角をラジアンで測ることにすれば弧PQ=θ、直角三角形の高さがsinθなのでsinθ<θですから、
が成立します。1/18≒0.555……なので確かに言えました。
最初に書いたようにぼくたちは三角比の値についてはあまり分かりません。だからなのか、ぼくにはこの類いの問題が面白く見えます。