いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

アドラーの心理学、精神分析

 割とNHKのテキスト、面白いのが多いです。『人生の意味の心理学 アドラー』(岸見一郎2016NHKテレビテキスト)を読みました。TVでも放送していたようですが、このテキストだけで分かるようになっています。アドラーという人の始めた心理学の解説です。例えば「自分は女性にモテない」というのは「そう思い込んでいる方が楽だからそう思い込もうとしているだけ」といった解釈をするそうです。思い切って告白するのもエネルギーが必要で、仮にうまくいったとしても途中でふられていやな思いをするかも知れない。だったら「自分はモテない」と最初からじっとしている方が楽なのだ、と。なるほど、まあそういう説明もあっていいかもしれません。しかしこれ、正しいのかどうか証明のしようがないです……。いや、だから価値がないとかそんなんではありません。正しいかどうか分からなくても、そう思っていれば(ある意味)人生のできごとを解釈ができるからです。精神分析という学問があり、そこでは人間の精神はイド(本能)、自我、超自我の3要素からなる、ということになっています。イドは「××がしたい、欲しい」といった欲望、超自我は行動の規範(自分で自分に課すルール)、自我はイドと超自我の間に入ってうまく調整する働きを持ちます。言われてみればそんなものなのかも知れません。イドが「楽をして寝ていたい」と言うけれど超自我が「こんなことではダメだ!」と戒(いまし)めます。そこで自我が「じゃああと10分だけなら寝ていてもいいだろう」とか(適当に書きました)。人間の精神をこうして3つの部分に本当に分けられるのかどうか分かりませんが、そういうものだと考えれば人間の行動に一応の説明がつきます。人生の哲学みたいなものは、それを持っていると何かあったときの判断が速くなります。「1分でも遅れて提出された宿題は受け取らない」ことにしている教員には迷いがありません。それが正しいかどうかではないのです。決めておけば毎回考える必要がない、そういうメリットがあるということです。アドラーの心理学や精神分析などというのは、「そう思っていればいいこともある」という点で、宿題の話に近いのかも知れません。

NHK「100分de名著」ブックス アドラー 人生の意味の心理学―変われない? 変わりたくない?

NHK「100分de名著」ブックス アドラー 人生の意味の心理学―変われない? 変わりたくない?

 

 ……というわけで、ぼくは面白そうなら分野にはこだわりません。何でも読みます。どこでどんな知識が手に入るか分かりませんし、どこかで数学や物理の役に立ったりするかも知れません。「こんなの、自分には関係ない」なんてただの浅知恵なのかも知れないのです。