いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

遅刻者数の変化

 A高校の生徒数を1000人としておきましょう。4月8日の遅刻者をx人とするとその日の非遅刻者は1000-x人ですね。遅刻したx人は担任に怒られて翌日はその9割が非遅刻者になるとしましょう。残る1割は懲(こ)りずにまた遅刻します。そして4月8日の非遅刻者1000-x人のうちの2割は油断して翌日に遅刻し、残る8割が遅刻しないと仮定しましょう。つまり翌日4月9日の遅刻者をy人とすると
y=0.1x+0.2(1000-x)
ということになります。実際には人間の行動はそんなに単純ではありませんが、数学の話、仮定です。さて、問題です。4月8日の遅刻者は50人、非遅刻者は950人だったとしましょう。A高校では上の法則で遅刻者の人数が変化するとして、100日後の遅刻者数を求めてください。
 「n日後の遅刻者数」だと数学Bの数列の知識が必要です。今回は100日後の遅刻者数を求めるだけにしておきましょう。6日目まで遅刻者数の変化を見てみると、

1日目 50人

2日目 195人

3日目 180.5人

4日目 181.95人

5日目 181.805人

6日目 181.8195人

というわけで、アッと言う間に182人くらいに落ち着いてしまいます。100日も経つと毎日の遅刻者数はほとんど変化しないのです(数学の言葉で「遅刻者数は収束する」と言う)。これをちゃんと示すには数学Ⅲの知識を使わなければなりません。ここではこの「収束する」という事実は認めてしまいましょう。すると、問題はいきなり簡単になります。100日後の遅刻者をx人とし、これが101日後で変化なし(遅刻者はやはりx人)とすると、枠で囲った式から
x=0.1x+0.2(1000-x)……★
が成立します。展開してxについて解けばx=181.8181…、つまり182人くらいということになります。この場合、200日後でも300日後でも182人です。いったん遅刻者数が安定したら、以降はそのままになるのです。しかも、解き方をよく見てください。人数を求めるのに使った★の式には最初の遅刻者数が入っていません。これは、最初の遅刻者が1人でも500人でも100日後には182人になる、ということを意味します。
 この問題に関しては、数学にマルコフ過程というのがあります。