いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

数式がたくさん入った書籍をkindleで出版する方法

 kindleから数式がずいぶん入った本を出版しました。初めてだったのであちこち、相当悩みました。同じ感じで苦労している人もいるかも知れません。大変だった部分をどうクリアしたのか、手順を残しておきます。ことによるとぼくが凄い勘違いをしていて、実はもっと簡単に解決できたのかも知れません。でも「こうすれば最低限、出版はできる」というのは確かなので価値はあるでしょう。

 さて、ネットでもkindleでも、「kindle出版の方法」みたいな記事や本はもうたくさんあります。しかし、それはほとんど文章主体の本。つまり、何かの体験記やエッセイ、小説などです。自然科学や技術関係など、特に数式を扱う本についての説明はほとんどありません。みんなどうしてるんだろ……と思って、(ユーザーとして)kindleで本を何冊か見てみました。すると、2種類あります。ひとつは数式もひと文字ひと文字選択状態にできる(通じにくいかも。要するに普通の文章みたいな扱いをされている)本。もうひとつはもとからある紙の本の1ページ1ページを画像としてまとめたような本です。こちらは写真集みたいなものを想像していただければよいと思います。前者のような方法も、確かに本は存在するのですから可能なのでしょうが、問題は素人にできるかどうか、です。実は、多分この手順を大変詳しく書いているネットの記事があるのです。しかしぼくは読んで諦めました。「これをこうして、このソフトでこうして、ここにこれを使って~~」と、もう書いてあることを理解するだけでそれこそ本何冊分必要かな、という感じだったからです。そういう方面の実力のある人には貴重な情報なのだと思います。

 そういうわけで、結局ぼくは写真集みたいにする方法で行くことに。次の本です。

プログラミング関係の書籍ですが、数式(分数、積分、関数の式、……)がたくさん出てきます。出版までの手順をまとめておきましょう。

 

①Wordで原稿を書く

数式作成の機能があります。これを使います。積分記号、総和の記号(シグマ)なども自由です。普通の文章の中で、数式が出てきたらこの機能で数式を書き込めます。最後には画像にするのですが、そのときぼやけているようでは困ります。1ページの文字数、行数は35文字×30行でやりました。文字は12ポです。最終的に画像にするため、ある程度大きくしておかなければなりません。
②Wordの原稿の各ページをPNG(画像ファイル)に変換する

ぼくはCubePDF(フリーソフト)を使いました。JPEGに変換することもできますが、パラメータを変えつついろいろ試してみても、JPEG経由だと最後にepub(最終的にAmazonに送る書籍のファイル形式)にしてKindleのリーダーで見てみると字の周りがにじんだ感じになるのです。どうみても売り物にはなりそうもなく、困っていたところPNGにしてみたらきれいに読めるようになりました。CubePDFはWordからの印刷時に印刷先を「CubePDF」に指定することで起動します。そのとき、各種パラメータを設定できるのですが、「解像度600、PNG、グレースケールに変換」で出力しました。

③LeMEで画像ファイルをまとめてepubを作成

LeMEはepubを簡単に作れるソフトウェアです。フリーですが、作成した書籍にはLeMEのロゴ(?)のページが追加されます。ライセンスを購入するとこれを外せます。ぼくは購入しました。

epubがうまく書籍になっているか、見え方などを確認

Kindle Previewerで見ることができます。これはAmazonからダウンロードできる、フリーソフトです。さらに、このソフトからmobiファイルを作成し、それを自分のPCのKindleリーダーで見ておくとよいと思います。Previewerでは拡大できず、画像がぼやけているかどうかまでは分かりませんでした。Kindleのリーダーで見るには、でき上がったmobiファイルを

C:\Users\ユーザ名\Documents\My Kindle Content

にコピーし、それをダブルクリックすればOKです。

epubAmazonへ送る!

mobiではなく、epubを送ります。

 

 以上が大体の手順です。書いてみるとどうってことはなさそうですが、ぼくはここまでたどり着くのにいったい何十時間費やしたか分かりません。実はこれだけではなく、他にも大きな問題がありました。以降で説明します。

 

 フォントの著作権の問題です。ハッキリした形で書いてあるサイトは少なく、ぼく自身も専門ではありません。従って、以降、ぼくの推測の部分も大いにあるのでご了承ください。

 今回の著書は2冊目です。1冊目は

Pythonインタプリタを作る コンピュータ言語を設計・実装してインタプリタの動作を理解しよう』

で、これは出版社(株式会社Impress様)から出しました。紙の本とkindleです。このブログでも少し書いていますが、フォントにも著作権はあります。こうして出版社を通して本を出す場合、使っているフォントの著作権に関する問題は全て出版社が解決してくれているはずです(想像ですが、そうとしか思えません)。出版社は本の売り上げからフォントの使用料を払っているのではないでしょうか。

 そういうわけでとりあえず、紙の本では著作権の使用料が必要です。kindleではどうかというと、端末(PCやKindleのリーダー)などにフォントはインストールされており、通常のエッセイなどの文章では著作権使用料は著者が気にする必要はなさそうです。例えばPCは購入時にフォントの料金も含まれているのでしょう。しかし、写真集などの画像ではそうはいきません。PCにインストールされていないフォントも表示できるのだから、その画像の作成者が著作権問題を解決しておかなければなりません。

 さて、そうすると今回のように本の各ページの画像をまとめたようなものを出版するときにはどうしたらよいのでしょうか。例えばMS明朝など、ワープロではおなじみのフォントも著作権がどうなっているのかなど、ぼくたち素人にははっきり分かりません。色々書いているサイトもありますが、あやふやなのもイヤなので、ぼくはM+というフォントを使わせてもらいました。商用利用も可ということで、開発者の皆様には頭が上がりません。もうひとつ、そのままのwordでは数式に「Cambria Math」というフォントが使われてしまいます。これも、自由に使ってよさそう、のように書いているサイトもあるのですが、ぼくは数式用に「soyokazeMath」というフォント(商用)を購入。これでスッキリしました。もちろん表紙も使ってよいことがはっきりしているフォントだけを利用しています。

 

 最後にひとつ。ぼくは画像ファイルを書籍にまとめるのにLeMEを使ったのですが、Amazonの「Comic Creator」というソフトを使うこともできます。これは名前の通り、コミックスを出版するなどで使えるのですが(要するに画像を集めた本を作れる)、なぜかこれを使うと最後にでき上がる本が、リーダーで見るといかにも解像度が低そうな感じで(?)ぼやけるのです。LeMEではそういうことはなく、きれいに仕上がっています。

 

 以上、こんなことを説明しているサイトは調べた限りではありませんでした。これからkindleで数式入りの書籍を出そうという人の参考になれば幸いです!!