正多面体の話です。正多面体とは、合同な正多角形を貼り合わせてできあがる立体のことです。正多角形というのは正3角形、正方形、正5角形…のこと。図は全て正多面体です。
実は正多面体にはこれだけの種類しかありません。例えば正100面体などはないのです。なぜなのか、今回はこれを証明してみましょう。
正多面体のひとつの頂点に正p角形の頂点がq個、集まっているとします。例えば正6面体(立方体)では正4角形(正方形)の頂点が3個、集まっています(p=4,q=3)。中学校で習っていると思いますが、p角形の内角の和は
(p-2)×180°……①
です。①を示すのは簡単で、例えば5角形は3個の3角形に切り分けられますから3×180°だし、6角形は4個の3角形に分けられるから4×180°ということ。さて、そうすると正p角形のひとつの内角は①をpで割って
とわかります。ここで、傘の先っぽを考えてみましょう。1カ所に角がいくつか集まっていますね。傘の骨に沿ってはさみを入れて平面に並べてみると、集まった角の和は360°には足りないことが分かります(想像してみてください!)。つまり、上の②をq個集めても360°未満なわけで、
が成立します。この式を整理すれば
を得ます。ここでp,q≧3であることに注意しましょう(「2角形」なんてないし、多面体の頂点に2個の角が集まっている、ということもあり得ない)。仮にp=3として★に代入すると
よって
従ってqの可能性としてはq=3,4,5しかありません。同様に、★でp=4とするとq=3、p=5とするとq=3となることがすぐ分かります。そして★はp≧6では成立しません。例えばp=6だと
から
となってしまうからです。pをある程度以上大きくすると★の左辺が小さくなりすぎて不成立、ということです。以上、まとめると
p=3のときq=3,4,5、(正3角形が3個か4個か5個集まる)
p=4のときq=3、(正方形が3個集まる)
p=5のときq=3(正5角形が3個集まる)
となります。つまり、正多角形はあったとしてもせいぜい5通りなのです。そして実際に存在して、それが順に正四面体、正八面体、正二十面体、正六面体、正十二面体なのです。
この証明は『正多面体を解く』(一松信2002東海大学出版会)によっています。
ぼくはこの証明を初めて読んだとき、すごく不思議に思いました。空間の中の立体が存在するかしないかが、こんな分数同士の大小で決まるんだ、と。不思議だけど、仕方ありません。世界がそうできているとしかいいようがないのです。