いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

DVD『電子立国 日本の自叙伝』紹介

 何年も前に買ったDVDをまた見てみました。『電子立国 日本の自叙伝』です。6枚組で内容は「新・石器時代 驚異の半導体産業」「トランジスタの誕生」「石になった電気回路」「電卓戦争」「8ミリ角のコンピューター」「ミクロン世界の技術大国」となっています。25年くらい前の『NHKスペシャル』という番組をDVDにしたものです。少し前、NHKでは『プロジェクトX』というのをやっていて、中島みゆきのテーマ曲『地上の星』の「♪風の中の昴(すばる) 砂の中の銀河 皆何処(どこ)へ行った?~」というのを憶えているでしょう。『電子立国……』の方はもっと地味で、「感動させよう!」という感じの作り(?)ではありません。しかし、昭和の時代の技術者たちが何を考え、何を目指してどんな努力をしていたのか、ジワッと伝わります。相沢洋氏の企画で、プロジェクトXとは異なり、かなり技術的な部分にも触れています。ぼくが買ったときはDVDBOXが¥20000、学生が買うのは厳しいですが図書館などで借りて是非見て欲しいDVDです。 

 第4巻「電卓戦争」には、早川電機(現シャープ)の大学出たての若いエンジニア4人が計算機の勉強をするためにその方面の権威、大阪大学の尾崎教授を訪ねた話が入っています。彼らは電卓を作るために白紙の状態から始めました。1年間大学に通い、研究室で「ディジタル計算機の論理設計」というテキストを勉強し(今でもamazonで中古だけど買える!!)、夜は会社でその日の復習をして応用問題を解き、予習をやったのだそうです。もちろんそれでいきなり作れるわけではありませんでしたが、大変な努力の結果、535000円の「コンペット」という計算機が完成しました。1964年のことですから、今の額に直すと倍くらいかも。車を買えたそうです。
 うまくいく保証もまったくなく、さぞ大変だった思いますが、彼らはすごく楽しかったのだと思います。相沢氏は番組の中で関係者たちにたくさんインビューしていて、そのときの彼らの話し方や表情から分かります。時代も違うし、単純に現代と比較することはできませんが、ぼくはこれが本当の勉強なのだと思います。