久しぶりに物理の問題を。ぼくが高校生の頃からよく迷っていたことです。きっとぼくの他にもいるはずです。
物理には過渡現象(かとげんしょう)というのがあります。回路などでスイッチを入れてから短い時間(0.1秒とか)の間に電流がどう変化するか、そんな問題が出てきます。最近は高校では微分方程式を扱いません(ぼくたちの世代の教科書には載っていました)。でも微分方程式をかじり始めた元気のある生徒には面白い分野でしょう。過渡現象の解析には微分方程式が必要ですが、易しいものなら高校生でも取り組めます。
さて、今回は過渡現象そのものではなく、過渡現象の解析に使う微分方程式を立てる際に必要な電流の符号の考え方がテーマです。理系の皆さんは何の迷いもなく電流の向きを決めていましたか? それとも何だかモヤモヤした感覚がありましたか? 図はコンデンサと抵抗を使った単純な回路です。コンデンサにはq(クーロン)の電荷が溜まっています。スイッチを入れた瞬間の時刻をt=0として、A点で、時刻tの右向きの電流を考えます。
は時刻tでのコンデンサの左側の極板に蓄えられた電気量の変化率です。これが正だとしましょう。dt > 0 だけ経って電気量は
だけ増えますから、A点で電流は右向きに流れています。結局、電荷qが蓄えられている極板に向かう電流が下の通りである、ということになります。
もちろん左向きを正とするならマイナスをつけるだけ。また、念のため最初の図で、点Bを流れる電流は極板に向かう向きを正とすると
となります(B側の極板の電荷はーqです)。A点での電流を考えると当たり前の結果ですが。
物理のテキストにはこういう話(電流の向きの決め方)はあまり載っていません。でも丁寧に理屈を追いたい学生はきっと「いつも何となくで曖昧で憂鬱……」と思っているのでは? ぼくはそうでした。しかし、これで今後は迷いがなくなります!!
追記:
A点では、実際には左向きに電流が流れます。dq/dt<0となるのです。でもここまでの議論は相変わらず成立です。ご心配なく。
コイルについても書きました。↓