用語を準備しておきます。まず、ここでは分数とは整数/整数を意味するとしておきましょう。既約分数とはもう約分できない分数のこと。例えば3/5とか、15/2などです。有限小数とは3.6901などのように、有限桁で終わる小数のこと。定理には出てきませんが、循環小数とは2.4568686868….…とか、4.5555……というように、途中から同じ数の並びの繰り返しになってしまう小数のこと。分数は、必ず循環小数か有限小数になるのでした(有限小数でも循環小数でもない数は無理数。分数は有理数なのだから必ずどちらかになる)。例えば3/4=0.75、23/3=7.666……、103/33=3.121212……のように。さて、定理とは次のようなものです。
既約分数n/mに対して、以下が成立する。
n/mが有限小数を表す ⇔ 分母mが2 , 5以外の素因数を持たない
上の3つの例を確認してみてください。最初の分数では、分母の4の素因数は2だけです。定理に従えば3/4は有限小数のはず。当たっていますね。2番目の分数では分母は3。定理によれば有限小数にはなりません。3番目の分数も分母の33は2,5以外の素因数3を持っていますから有限小数にはなりません。
証明は易しいです。まず(⇒)の証明です。n/mが次のように有限小数で表されるとしましょう。
この有限小数は下のように書けます。
これが規約でないなら約分します。しかし分母には素因数は2か5しかありませんから、規約になるまで約分しても「分母は2か5以外の素因数を持たない」が成り立っています。
次に(<=)の証明です。既約分数n/mの分母mが2,5以外の素因数を持たないとしましょう。このとき、分母に含まれる素因数2と素因数5の個数が同じになるように分子分母に2か5をかけ算して、
の形にできます。例えば、
のようにするわけです。こうすると分母は
となり、つまり分数は自然数を100とか100000とかで割った数になるわけです。これはもちろん有限小数です。以上で証明は完了です。
分数は、有限小数でなければ必ず循環小数になりますから、この定理を知っていれば実際に割り算をしなくても分数を見ただけで(規約になるまで約分すれば)、循環小数か有限小数になるか判断できることになります。大学で数学の先生が授業のとき学生たちに「え、ホントに知らないんですか?」と驚いて尋ねていた定理です。